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情熱のかけらの記録

STAXイヤースピーカー/真空管ドライバー

( WE396A/SRPP/P-G帰還+6FQ7 PP ) 2008年11月製作(完成)~備忘録~

f:id:unison3:20190615014824j:plain真空管アンプにはまって以来ヘッドフォンアンプも真空管で作って感動していた頃、巷で評判のSTAXをいずれは入手したいという思いがありました。ところが2007年暮れ頃に気がつくと何故か手元にBasic System II(SRM-252A+SR-202)があるじゃないですか!(笑)

さすがに最初のSTAXだし、上級機はかなりお高いので入門用のシステムですが、このBasic Systemは評判も上々のようですし、ドライバとセットで手頃な価格(とはいっても4万円以上します)は戦略製品なのでしょうか。

早速、セットの小さなドライバアンプで聴いてみると、何とも自然な音が伸び伸びと出てきて、まだエージングもできていないはずなんですが素性の良さに感動した記憶があります。低域、高域いずれも強調されないモニター的な音調が好みなので、STAXの繊細な解像感や高域の屈託のない伸びやかさはたまらない魅力でした。

しばらくは気に入って毎日ならしを兼ねて聴いていましたが、自作の真空管ヘッドフォンアンプ+ゼンハイザHD-595(ドンシャリなんだけど真空管アンプとの相性がよく装着感は抜群)等で聴くお手軽なダイナミック型の音も捨てがたい魅力で、だんだんと使用頻度も下がっていったのでした。しかし、せっかく買ったのにこれはいかんと思い、ドライバを真空管にしてSTAX本来の実力を追求すべきと、またまた煩悩が沸き上がってきたのが事のはじまり。今にしてみるとSRM-252Aもとてもよくできたドライバなんだけど、引き締まった半導体の音で演奏の雰囲気が少し足りなかったように感じます。真空管ドライバで奏でるふわっとした音の広がりの中に芯のある繊細でしなやかな解像感が欲しかった。

[ 回路図 ] [ 実態配線 ] [ レイアウト ] [ パーツリスト ]
※いずれもPDFファイルです。

シンプルな回路

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さて、STAXイヤースピーカー用の真空管ドライバってどうやって作るの?から情報収集。WEB上の記事などを探してみるといくつか作例や回路が見つかりました。要するにプッシュプルアンプの前段部分だけみたいな感じです。差動回路の例は作りにくい感じがあり、また差動2段増幅では高域がでないという記事が引っかかりパス。

シンプルな初段カソード接地+P-K分割という回路が簡単そうですが、STAXは高域が伸びやかでなければならないと考えていたので、初段SRPPがいいのではと常に引っかかっていました。2008年になるとラジオ技術誌に森川氏設計をベースにした差動+終段SRPPの作例を玉置氏が発表され、相当魅力的に思えましたが球数が多くやや複雑すぎてうまく完成できるか不安に思い却下。

結局、初段SRPP+P-K分割の位相反転に決め、手持ちのWE396Aと6FQ7を生かす設計を検討しました。作例では12AX7や12AU7を使ったものが多いようで、一部5670(396A互換)を使ったものがありました。位相反転段はマラード型も考えましたが、球の数が一つ増えるしゲインが高すぎると思いパス。ただし、上級グレードのイヤースピーカーでゲインが必要な場合はマラード型がいいのかもしれませんね。とりあえず、「シンプル(簡単)なものほど美しい(音がいい)はず!」との信念なんですが、実は簡単なものしか作れないだけなんですよね(笑)。

STAXコンセント

製作の方針が決まったのでSTAXにコンセントを発注したのですが、プロバイアス用、ノーマルバイアス用それぞれ1人2個までで、税込み1個1,050円もするんですね。ついでなので、プロ/ノーマル2個ずつお分けいただきました。今回はプロ/ノーマルの両方に対応するドライバとしました(ノーマルバイアスのイヤースピーカー持ってないのに!)。バイアス電圧が異なるだけですので、電圧を生成する部分で分圧してやれば簡単にできるはずです。

初段P-G帰還を追加

最終的な回路は、初段SRPPですがP-G帰還を追加してみました。SRPPだと出力が高いので幾分のゲイン低下があっても歪みなどの特性改善を試してみようと思ったわけです。この回路だとP-G帰還かカソード電流帰還以外にNFBのかけ方がよくわからなかったのもあるのですが、STAXでも過去に初段と終段個々にP-G帰還をかけているドライバ(SRA-7S)があったようです。ただし、SRA-7Sでは初段への帰還はCR結合のP-K分割段カソードから戻しているようです。f:id:unison3:20190615015046j:plain

今回の回路のP-G帰還ですと通常グリッドに直列に入る抵抗を省略しているので、ボリューム位置によって直に帰還量が変わります。しかし実際にはヘッドフォンで聴く音量は普通は一定(同じような音量)の場合が多いと思うので、結果として帰還量の変動はあまり問題にならないと思いました。また、100KΩAカーブのボリュームを使っていますので中点で最大25KΩ程度のインピーダンスになりますが、そのポジションはボリューム2時~3時程度の位置。P-G帰還併用で入力インピーダンスは下がるかもしれないけど、基本的にプリアンプなどを通さない接続を前提にしているのでさほど問題はないはずとの見込みでした。

ちなみに、このドライバにSR-202接続での聴取音量位置は10時~12時程度です。これ以上ボリュームを上げると耳が壊れます(CD→DAC経由で接続。DACは2Vrms出力)。使用するイヤースピーカーでも音量位置が変わると思いますので、必要な増幅度との兼ね合いで無帰還にしたり帰還抵抗を変更してみてもよいと思います。

P-G帰還を考えていましたので、初段のカソード抵抗はμ=40程度になる1KΩにしました。ただ、設計時はもう少し電流が流れる見積もりで、82KΩの抵抗は75KΩだったのですが、実測でプレート電圧が若干高かったため変更しました。もう少し電流を流した方がいいのかもしれませんが、うまく調整できなかったので打ち切りました。現状問題なく動作して音も悪くないのでこれでよしです(笑)。

むしろ動作電圧の高さから家庭用AC電源の変動や左右および(双極)ユニット間のばらつきの影響の方が問題でした。396Aは6本手持ちがあったのですが(うち2本はペア取り品のはずだったのですが)、ばらつきが結構あり、なんとかうまく組み合わせる3本を選別しました。396Aは昔はノイズのある球が多いとかもいわれたようですが、手持ちのものでは1本だけマイクロフォニックに敏感なものがあった以外は大丈夫でした。

初段(下の球)のグリッドに直列に入っている抵抗1.5KΩは寄生発振止めですのでソケットに直にハンダ付けしています。また、カソードのバイパスコンデンサを220μFに増やすと低音に迫力が出てくるようで悩みましたが、Silmic IIの音質が好きで手持ちの100μFを使いきりたかったのでこの回路にしています。P-G帰還のDCカット用コンデンサは、EROの0.1μFも試しましたが、何となく音にキレがない感じでしたのでAmcoの0.22μFにしています。5極管を使った単管のヘッドフォンアンプでもP-G帰還を採用しているものがあるのですが、そちらは1μFを使っています。

初段と位相分割段は直結です。P-G帰還を追加した場合、直結でうまくいくのか不安でしたが特に問題ないようです。P-K分割による位相反転段も396Aを使いました。396A(5670)のヒーター/カソード間耐圧は100Vですので、カソード電圧75V前後ではそのまま接地してもなんとか保ちそうですが、長期安定のためヒーターバイアスを50Vほどかけています。

出力段は6FQ7(6CG7)

f:id:unison3:20190615015012j:plain終段にはSTAX純正ドライバでも採用されている6FQ7を使っています。位相分割段後のコンデンサ(0.1μF)と6FQ7のグリッド抵抗(270KΩ)での時定数はカットオフ周波数で5.9Hz程度です。もう少しコンデンサ容量と抵抗値を変えてカットオフ周波数を下げた方が良かったかもしれませんね。また、6FQ7のカソード抵抗は共通にせずに各ユニット別に抵抗とコンデンサを分けました。こうすると幾分ユニットのばらつきに強くなるようです。プレート電圧は290V前後でカソード電圧が11V程度になるようにしています。各ユニットには約4.25mA流れています。

イヤースピーカー出力にはコンデンサを介して接続していますが、省略している例も多いようです。出力のカップリングコンデンサにはAmcoを、段間にはASCと使い分けました。このドライバには結構いい組み合わせと思っています。段間はJensenの錫箔(銅箔)も考えていましたが、昨今ずいぶん高価になっているようであきらめました。

6FQ7のヒーターはノイズ対策でフィルムコンデンサを介して交流的に接地してみました。効果があったのかはわかりません(笑)。ただ、このドライバの真空管はすべて交流点火ですが、非常に静かでハム等のノイズは全く聞こえません。ボリュームを上げていっても電源が入ってるのかどうかもわからない程です。

電源部の回路

電源トランス(TANGO PH-100)とチョークトランス(TANGO C-515)は手持ちの中古品を再塗装して使いましたので、B電源は250V-0-250Vからの倍電圧整流です。ダイオードと整流管6X6によるハイブリッドにして、B電源の立ち上がりが緩やかになるようにしました。整流平滑はチョークと抵抗・コンデンサによる普通のπ型ですが、初段P-G帰還を入れているため段数を設けてリップルを厳重に除去するようにしました。

なお、電源トランスは250Vからの倍電圧整流では少し電圧が高いようです。たとえばノグチトランスのPMC-100Mとかですと240V-0-240Vのタップですので、こちらを使えば整流管後の電圧ドロップ抵抗を省略してちょうどいいかもしれません。もしこの回路を製作される場合は、使用電源環境(AC電源電圧)に合わせて実測調整した方がよいと思います。(1K~1.2KΩ程度)

STAXイヤースピーカー用のバイアス生成はチョークを出た後の580V前後から引き出しました。試しに付けたバイパスコンデンサは手持ちの高耐圧のものがちょうどぴったりでした。ここは630V耐圧のフィルムでも大丈夫と思いますが、無くても問題ないはずです。バイアスはほとんど電流は流れませんので、この程度の平滑で十分でしょう。平滑回路の最後にブリーダー回路をつけて、そこから396A用のヒーターバイアスを分圧して得ています。ここの分圧抵抗を82KΩから100KΩに変更すると約60Vになります。

シャーシ加工

何かを製作するときには、外見のデザインをどうするかをまず考えてしまいます。やはりモノとしての美しさ、というかバランスが悪いと使う気がしません。まぁ音が良ければ見た目は気にしないという人も多いかもしれませんが。レイアウトではバランスよく配置するために、無駄に(?)ブロックコンデンサを使っているので結構ボリューム感があります。

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当初シャシーはタカチのOS70-26-23を縦長で使う予定だったのですが、天板が2.0tと厚いのでトランスの角孔加工とブロックコンデンサ用の30mmのシャーシパンチが効くか少し不安でした。またフロントパネルになる部分(側板)は3mmもあるので、コンセントの18mm孔くり抜きも面倒です。結局、少し大きいのですがノグチトランスのSC-30206というアルミ1.5tのもの(孔なし)にしました。これには専用の底蓋もあるので合わせて購入。本体は2500円と安いのも魅力です。

丸穴はシャーシパンチを使い、電源トランスとACインレットの角孔はドリルで孔をあけてからジグソーで切り取りヤスリで整形。塗装はペーパーをかけてからプラサフで下塗りして水研ぎし、自動車用のスプレーペイント(ホンダ車エターナルブルーPというやつ)を4回に分けて吹きつけ。その後クリア上塗り2回程で仕上げました。深いブルーメタリックでいい感じです。塗装は表側のみで、内側はアルミ無垢のままとしました。

今回はこのシャーシを縦長で使うのですが、シャーシの短辺側(特に前面になる部分)はこのままでは美しくないので、2mmのアクリル(黒スモーク)でフロントパネルを付けることにしました。このフロントパネルの穴とシャーシの穴が少しでもずれると付かないので、加工では一番気を遣った部分です。特にφ18のコンセント孔は7mm以上のドリルを使うと割れてしまうことが多いので(2度失敗しました!)、φ3mm→6mmと穴を開けてからテーパーリーマで辛抱強く拡げました(D.I.Yショップで売っているアクリルパネルは硬めで割れやすいので、柔らかめな三菱レイヨンのアクリライトを使いました)。 

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実際にはパネル側を先に加工し、パネルの現物合わせでシャーシ側に孔を開けました。パネルの外寸は縦はアバウトでも大丈夫なのですが、幅はサイドウッドを付ける予定でしたので、ピッタリ20cmまでヤスリで整形。さらにアクリル無垢では傷が付きやすいので、カシュー(スーパークリア)でおもて面のみコーティングしました。

パネルを半透明のスモークにしたのは、レタリング様にプリントしたフィルムシートをシャーシ側に貼り付けて、文字が透けて見えるようにするためです。以前にもヘッドフォンアンプ製作で同じことをしているので真似ました。底蓋はシャーシと同じ1.5tのシンプルなアルミ板でしたので、放熱用に穴を開け、ゴム足を取り付けました。これでシャーシが完成!シャーシ加工がいつも一番しんどい作業です。しかし、塗料やパネル類のコストを考えるとタカチのケースとあまり変わらない出費になるのですね。

配線

配線は平ラグと縦ラグを使った空中配線ですが、電源周りの結線が線材が太い分少し混み合っています。平ラグは電源部の電圧調整で抵抗が簡単に交換できるように分けました。製作では、ヒーター配線だけを済ませた後、B電源側は配線せず一旦通電してソケットにヒーター電圧が出ているかを確認。縦型コンデンサを4つ並べたものを含む平ラグ3種類をパーツとしてそれぞれ(配線用のケーブルも付けて)別途製作しておいてから、シャーシに組み込んで他のラグ端子およびソケットと結線します。

実態配線図でブルーで太く記されているのはGNDの配線です。基本的には1点アースで考えていたのですが、電源トランス近くに立ラグでダイオードと抵抗を配するので、電源トランスのシールドアースとAC電源アースを繋げた上で、この縦ラグのセンターに結線しシャーシに落としました。結果、電源トランス近くと初段の間の2点アースになりました。シャーシアースをとる部分はよくヤスリをかけて、ラグのネジ端子に菊座を挟んで固定しましたが、このアース方式でハムノイズ等は全く出ませんでした。

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ボリュームにはアルプスのデテントではないものを使いましたが、端子が基盤用のピンタイプだったため、ユニバーサル基盤を切り出し端子をハンダしやすいように加工しました。入力RCAジャックからはボリュームまではシールドケーブルを使い、ボリュームからの出力はシールドケーブルは使いません。なお、入力ジャックとは別にスルーアウト用に一組RCAジャックを追加していますが、これはヘッドフォンアンプやプリアンプを2台繋いで使える様にしたいためです。

電源スイッチは安全面を考えて両切りにしています。一般的な片切りでもいいと思いますが、ネオンランプを点灯するためにラインを1本引くのであれば、線の引き回しという点では両切りとあまり差がないように思います(両切りだとネオンランプにスイッチから直に引ける)。電源トランスの一次側にスパークキラーを付けて電源OFF時にポップノイズがでないようにしました。

配線に使用した線材は、電源周りは18AWG耐熱電線とダイエイ電線(20芯と30芯)、ヒーターはベルデンの22AWG耐熱電線、その他は22AWGの(MIL)テフロン銀メッキ線、(MIL)銀メッキシールド線等です。あるものを使いましたので線材の色使いは適当です(笑)。ハンダは使い慣れているKester44で無鉛ではないですが、音も定評があり濡れやすく美しく仕上がります。錫メッキ線や配線が集中する端子のハンダでは60W以上の鏝が必要です。シャーシに余裕がありますし、事前に実態配線図で検討済みなので、配線作業自体はさほど難しくはありません。

動作確認と測定

 f:id:unison3:20190615014914j:plain配線が完了したら、実態配線図どおりか回路図どおりか念を入れて確認し、シャーシ内をきれいに掃除してから、真空管をすべて刺して電源を入れ、異常が無いかを素早く確認。その後各部の電圧を測定して設計との違いをチェック(小心者の僕は最初は壊れてもいい5670を付けて動作確認したのでした)。

一発で動作し特に大きな異常もありませんでしたが、B電圧のドロップ抵抗を当初947Ω (2K+1.8Kパラ)にしていたので全体の電圧が予想よりも高く、測定した電圧を元に計算し直し1KΩに取り替えました。また、初段の電圧が高めなのも気になり、回路の項で書いたように一部抵抗を変更しました。

各部電圧以外に簡単に残留ノイズを測定してみました。入力ショートで左右chとも0.1~0.2mV以下でしたが、デジマルで計っていますので大体の目安程度です。AC電圧ではRch 4.5mV, Lch 9.7mV程でした(左右で少し差がありますが)。これはかなり満足できる数値のように思います。出力100Vの場合、Rch -87dB, Lch -80dBの低レベルです。

音に感動!

回路のところでも書きましたが、非常に静かなアンプに仕上がりました。製作者の腕がよいのか(笑)、ヘッドフォンアンプですので対ノイズという点では、まずは大成功でした。

さて、音ですが最初はP-G帰還を付けずに初段SRPP素のままで聴いてみましたが、予想よりもパワーがある生々しい音に一瞬で感動してしまいました。高域も繊細な伸びやかさがあり窮屈さやシャリついたところもありません。低域も少しふわっとしていますが量感があり帯域の不足は全く感じさせないものでした。音の分離と広がり、奥行き、解像感があり、一聴して半導体アンプ(SRM-252A)の引き締まった音が小じんまりしたものに思えてしまいました。予想を超えてかなりいい音です。ちなみに聴取のボリューム位置は11時から12時程度になりました。

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次にP-G帰還を追加して聴いてみました。生々しさは無帰還の方があるようですが、滑らかで艶が増した音になりました。無帰還が生々しいとすればP-G帰還では艶めかしいという感じでしょうか。

クラシックやストリング系の響きは素晴らしいものがあります。DEPAPEPEやGOVI等のアコースティックギターを聴くと、ダイナミック型のヘッドフォンで少しうるさく聞こえていたものが、セパレーションの良さと繊細な響きのハーモニーであらためて感動させられました。

また、真空管アンプらしい中域の厚みもあるのでジャズボーカル等も生々しく再生します。うまく表現できませんがかなり満足度の高い結果になりました。

真空管を替えてみる

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初段と位相分割段はWE396A(NOSが4本、中古2本から選別)、出力段はRCAの6FQ7(ペア品)、整流管はPhilips ECGの6X4WAが現在の構成です。未使用品が多いのでエージングでもう少し音もこなれてくると思いますが、試聴で書いたのは20時間以上鳴らしてからの感想です。

初段と位相分割段をGEの5670W(70~80年製)、ロシア製6N3P(60年~製選別品)でも比べてみましたが、5670W、6N3Pいずれも解像感、高域の繊細さではWE396Aに及びません。あらためてWE396Aが素晴らしいことを実感しました。ただし、5670Wが悪いわけではなく、これでも十分な音だと思いました。むしろ396Aですとポップスやロック系では解像感や繊細さが強調されてうるさく感じることもあるようです。6N3Pは予想外にいい音で驚きました。まだ新しくエージング不足で少し硬い音の印象がありますが、大きな外見の無骨さと裏腹に結構繊細な響きもあり押し出しのいい音です。鳴らし込んでいけば化けるかもしれませんね。

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6FQ7も松下(National)、日立6CG7、SYLVANIA 6CG7、GE 6FQ7に替えて比べてみました。松下のものはNOS品とのことだったのですが、8時間ほどエージングして鳴らしているうちに1本の片ユニットが不良になってしまいました。それまではいい音で鳴ってました。日立の6CG7(これは平凡かな)よりいいかもしれません。SYLVANIAの6CG7はNOS品を入手後、自作2A3シングルアンプの前段で使っているものなのですがこれはいい音です。ダイナミックさと繊細さが両立していて、なんというか静けさがあります。私的にはRCAよりもよい印象でした。GEのものはやや使い込んだ中古で左右2本とも少しユニット間のばらつきがあるもの。音自体は柔らかさではRCAに劣りますがキレやパンチ力があるので、状態が良ければジャズ等に合いそうです。

作って良かったけど...

このドライバはシンプルな回路ですが、ここまでいい音になると、より上級グレードのイヤースピーカーが欲しくなってしまいました。そして、このドライバでSTAXは我が家の他のダイナミック型ヘッドフォンとは次元の違うものになってしまいました。うれしい反面、今まで結構気に入っていた自作のヘッドフォンアンプ+ダイナミック型が陳腐に感じてしまって少し口惜しい気もしています。