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情熱のかけらの記録

スピーカー修理&改造(その2)~「Monitor Audio MA700 Gold MK2」

(スピーカー「MA700 Gold MK2」修理+改造)2019年10月製作(完成)~備忘録~ 

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またぞろのスピーカー熱で先のEG-50改造を行っていたのですが、改造完了前に「他にも何かないかな?」と欲が出て、外観程度の良さから何となくポチってしまったのがこのスピーカーでした。オークションで入手したのですが、取り外し後動作未確認でジャンク品扱いのためかお安くゲットできました。しかし届いて早速音出し確認してみると、片側ウーファーから音が出ません!「はぁ~?そういうことかっ!」とため息が出ましたが、とりあえずバラしてネットワークや接続をチェックすることにしました。失敗したかと思いましたが、実は素晴らしい結末が待っていたのでした(笑)。

「MA700 Gold MK2」修理&改造編

このスピーカーの発売は25年程前(1994年)らしいです。当時"季刊StereoSound"か何かの雑誌で発売を記憶しているのですが、評判も上々だったようです。日本では10万円を軽く超えていて海外では$1200程だったようですね。いずれにしても、さほど安物というわけではなく、ツキ板も Black Ash, American Walnut, Santos Rosewood, California Oak と色々あって仕上げも綺麗。重量もあり、エンクロージャーやユニットも高級感があります。

【 仕様 】Monitor Audio MA700 Gold MK2 (Made in England)
再生周波数:45Hz - 30kHz (±3dB)
システムタイプ:2-WAYバスレフ (リアバスレフ) / 16cmウーファー / 2.5cmドームツイーター
インピーダンス:8Ω
出力音圧レベル:89dB (1m)
許容入力:20 - 100W
筐体材質:MDF+ツキ板仕上げ(American Walnut)
外形寸法:(幅)216×(高さ)350×(奥行)252mm (重量)約8.16kg/1台(実測 9.5kg/1台)
ウーファーエッジまでの外径14cm, ユニット外径16.5cm, 取り付け最大径19.5cm (実測)
※ツイーター:アルミニウム・マグネシウム合金+金コーティングダイヤフラム

ウーファー:ポリマーコーン(ポリプロピレン+カーボンファイバーモノマー)、PVCダイアフラムエッジ

入手時の状態と手入れ

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このスピーカーのユニットやサランネット、エンクロージャーはかなり綺麗で、わずかな日焼けがありましたが、ウーファーのゴムエッジも劣化が感じられず弾力があります。筐体の打ち傷などもほとんどなく角の小さな擦れ程度でした。

ただし底部はインシュレータを付けていたのかテープ跡が残っていて、乾いて取りにくくなっていました。サランネットは破れ・ほつれも全くなくエンブレムもしっかり付いていて綺麗な状態でした。前所有者が丁寧に扱っていたのでしょうね。

輸送か梱包のミスかはわかりませんが、ツイーターのセンタードーム1つに凹みがあったのですが、ガムテープでちょっと引っ張ったら簡単に綺麗な半球状に復元できました。外装ではスピーカーターミナルの劣化(くすみ)があり、動作確認時は"ピカール"を綿棒に付け、簡易に磨いてバナナプラグの接触を確保したのですが、後でネットワークと共にターミナルボックスをバラし、希釈したサンポール(洗剤)に端子を2~3時間ほど浸してピカピカにしました(笑)。

さて、音が出ないウーファーですが、ターミナルボックスを外してネットワークをチェックしてみたら原因がすぐにわかりました。ウーファーの結線は "Monitor Audio" と印刷された、やけに太い平行ケーブル(被覆も厚い)が使われていたのですが、このケーブルとコイルの結線不良でした。

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ネットワークはターミナルボックスの裏にパーツが直にホットボンドで接着されているのですが、ボンドが劣化してコイルが剥がれ落ちプラプラ状態になってました。ケーブルが太すぎる上にコイルの巻線とのハンダ付けも下手くそ!コイル以外の抵抗やコンデンサのハンダも酷いですな。アルバイトのおばちゃんが組んだのでしょうか?(笑) コンデンサはフィルムですがコイルの巻線も細い。これではEG-50の(オリジナル)ネットワークが立派に見えますよね。

とりあえず、2台ともネットワーク部品を全て取り外してハンダも綺麗に吸い取り、作り直すことにしました。同時にネットワークを回路図に書き起こしました。簡単な回路なのですが、6dB/Oct(-3dBクロス)の音がいいと言うオーディオファイルも多いし、複雑な凝った回路だからいい音とは限らないのです。

ネットワークを作り直し

[ ネットワーク回路図 ]

クロスオーバーネットワークは、低域(LPF)、高域(HPF)とも6dB/Oct(-3dBクロス)で、ツイーター側は3.3Ωの抵抗も直列に入り、少し高域インピーダンスをダンプ(調整)しているようです。まず、オリジナルの音を聴こうと元の回路とパーツのままで組んでみました。ウーファーへの内部ケーブルは無駄に太くてハンダし難いので、手持ちの Belden 8460 を使いました。

f:id:unison3:20191020232104j:plainアンプに繋いで音出し確認すると、両スピーカーからマッタリとブリティッシュ(ヨーロピアン?)サウンドが溢れてきました。素晴らしい!そこはかとなく高級スピーカーの音質で、ツイーターは刺激的な音が全く出ません。それでいて高域が詰まっているわけでもなく伸びやかさもありますね。
フワッと音場が広がり、優しい空気感の中で音楽が奏でられるクラシカルな感じもしますが、音に芯が無いわけでもありません。Monitor Audio もイギリスのメーカーなのでこんな音が標準なのでしょうか。

これより新しい Bronze BR1 も持っているのですが、やはりツイーターからは刺激的な音は出ないですね。このスピーカーはBR1よりも大柄なせいか、低音も量感があり音場感が豊かで、音楽の雰囲気があります。この音は(初代)HARBETH HLCompact に似ていて何か懐かしさを感じますね。

改造中の "創和 EG-50" がJBLやALTEC風のアメリカン(?) な鳴りっぷりの良い音なので、比べると対照的です。このスピーカーのような落ち着いたブリティッシュサウンドは、人によっては(あるいはロックや電子音主体の音楽では)、緩いとかあまいとか感じるかもしれませんが、ハイファイな音よりも音楽そのものに浸りたいと思う人には心地よいスピーカーかもしれませんね。

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しかし、しばらく色々なジャンル、楽曲を心地よく聴いていると、どうもマッタリしっとり落ち着きすぎかな?とも思えてきました。EG-50の試聴を繰り返していたので、余計に違いを感じてしまうのかもしれません。
ジャズやポップス等では「もう少し中高域にメリハリがあってもいいんでないかい?」とも感じてきて、ツイーターに活入れすることにしました。(といっても引っ叩く訳ではなくて)抵抗値を落としてツイーターに少し主張させようという訳です。

活入れチューニング?!

オリジナルの抵抗はセラミックの 3.3Ω(7W) ですが、若干小さい 2.5Ω の抵抗が手持ちで丁度ありました。15年以上前の製作の残り物で、Millsの無誘導巻線抵抗(12W, ±1%)です。キャパシタは同じままで抵抗値を下げることで、共振周波数も上がりますので高域が少し出てくるはずです。

余談ですが、当時のメーカーであった Mills Resistor社は、その後 Central Resistor社(Huntington Electric) 傘下になり、今では Huntington Electric も Vishay グループのようです。今回使った MRA-12 という抵抗は、 ”Vishay Mills" ブランドで今でも製造されているみたいです。

この抵抗は、"ALTEC CD408-8A" を使った 自作スピーカー に組み合わせた スーパーツイーター (FOSTEX FT96H) のアッテネータに使ったら、解像度が高くキラキラし過ぎる音になってしまって、結局採用しなかったものです。逆に今回のような落ち着いたスピーカーには "活入れの刺激剤" として合うのではと期待したのでした。

早速、抵抗を交換したのですが、ネットワーク部品自体が少ないので簡単です。コイルは巻線が細く解れそうでしたので、テフロンテープを巻いてボンドで止めました。結線部を丁寧にハンダ付けし、ターミナルボックスから剥がれないように、アクリルボンドとホットボンドでしっかり接着して出来上がり。

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内部ケーブルとスピーカーユニットの接続は、EG-50はハンダ付けでしたが今回は金メッキのファストン端子にしました。ついでにショートケーブルも CANARE 4S6G の芯線2本縒りで作成。このスピーカーのターミナルは元々バイワイヤリング用になっています。

エンクロージャー底部にはテープ残骸がこびり付き、固くなっていて綺麗に剥がせなかったので、(アセトンを使ってみたらニスも剥げるようで)サンドペーパーで底面全体を綺麗にしてから油性ニスを上塗りしました。この底部に8mmの下穴を空けてスパイク用ナットを3点支持で埋め込みました。スパイクは振動吸収や緩み防止目的でゴムワッシャーを挿んで取り付けました。

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なお、このスピーカーの吸音材はスポンジです。フロントバッフル以外に厚さ3~4cm程のものが全面入っていますが、吸音材をいじるとバランスが崩れると思いオリジナルのままにしています。また、ターミナルボックスの取り付けにガスケットが無かったので、ゴムシートで作成して挿みました。最後にウーファーとツイーターのゴムエッジ部分をスクワランオイルで拭き、エンクロージャはワックス磨き。サランネットも一応洗浄して乾かしました。これで修理&改造は完了です。

修理&改造後の音 ~まさに匠のチューニング修理ですな!(笑

f:id:unison3:20191020234603j:plain抵抗を変更しスパイクを付けた音質ですが、思惑どおり中高域のメリハリが少し出てきました。全体のバランスを崩すほどの違いはないのですが、オリジナルより解像感が増したようで中高域の音の輪郭がはっきりして、かなり変化したように感じます。これは抵抗値と共に抵抗の音質の差も大きいかもしれませんね。

とは言っても、決して高域が張り出しすぎたり刺激的な音にならないのは、ツイーターの性格なのでしょう。元々優しい感じの音場の広がりで安定感のあるスピーカーですが、中低音の厚みや奥行きもあり、サックス等の管楽器も艶やかでボーカルも生々しく浮き上がってきます。特にピアノやギター等ストリングの響きが柔らかく美しいですね。Alex de Grassi や Michael Hedges のアコースティックギターが、オリジナルよりも音のエッジが立ってクリアで繊細。それでいて硬くもならず膨よかに響きます。ちょっと感動しました。

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バイアンプ&バイワイヤリングで鳴らすと、低域のレスポンスも良く、楽曲によってはハッとするようなドラムやベースのアタックが飛び出します。中高域のクリアさも増して、サイズ以上のスケールで繊細な音場に包まれる心地よさがあります。

わずかの修理&改造で素晴らしく良い(好みの)音に変わったかなと思います。これならジャズやポップス等でも不満はありません。
「MA700 Gold MK2」このスピーカーとても気に入りました。

全くの余談で戯れ言なんですが...
世の中には剛毅な人もいるようで、オークションやネット上で『匠のチューニング』とか『完全匠』『入魂の匠』とか『スーパーチューニング』等と自ら宣伝してスピーカー等を改造して販売している人もいるのですねぇ。自信あるんでしょうね。何が匠なんでしょうかねぇ。まさか個人の名前じゃないですよねぇ。技や目の付け所を教えて欲しいものです。自分は、、、恥ずかしくて言えませんねぇ。