(ポータブル電源製作) 2024年12月完成 ~備忘録~
暫く前に自動車のバッテリーを交換したのですが、取り外したバッテリーをポータブル電源で再利用できないかと思い、パルス充電器でデサルフェージョンして再生作業をしてみました。バッテリー自体はまだ使えそうな感じに蘇ったのですが、やはり鉛バッテリーでは放電深度も浅い上に容量も小さく重いので、ポータブル電源には「なんだかなぁ~」と断念。
ここで止めておけばよかったのですが、またまた煩悩が湧き出して、最近お安くなってきた "リン酸鉄リチウムイオンバッテリー" でポータブル電源を自作することにしました。車中泊はあまりしませんので、釣りやキャンプ等のアウトドアフィールドや車内での利用が主ですが、「災害時にも有用だよね!」と内心言い訳して設計を進めたのでした。インバーター内蔵のポータブル電源もいろいろ販売されているのですが、電源容量の割にお値段高すぎ!と思っていたのです。
[ 構成配線図 ] [ 内蓋とコンソール ] [ 配置イメージ ]
当初、12V/50Ah(640Wh)のバッテリーを1つ購入してドカット4700に組み込みました。内部に余裕があったのでドカットの中皿もそのまま使い、コンソール台を製作して中皿に設置し、ドカット自体の加工はしませんでした。コンソール台にバッテリー切断スイッチとバッテリーモニター、シガーソケット2つを付け、内部のターミナルブロックからXT60Hのソケット(♀)を2つ引き出した簡単な構成で完成させました。
この構成でもそこそこ使えるのですが、インバーターも500~600W程度までしか使えないし容量的にも何だか中途半端な感じに思えました。とはいってもこの時の手持ちインバーターは300Wだったのでドカットに内蔵できるし、中皿も使えて工具やコネクタパーツ類も収納できるので十分だったのですけどね。
バッテリー2並列に構成変更
結局、この初号機は新品状態のまま本格的に使うことなく、1ヶ月後に同じバッテリーをもう一つ購入して、2並列の100Ah(1280Wh)で構成し直すことにしました。さて、バッテリーが2つ揃って試しにドカットに入れてみたら、同じ向き(縦2つ)ではインバーター用のアンダーソンコネクタ(120A)のパネルマウントが付けられないのですね。さらに、ターミナルブロック等を取り付けたアルミ板シャーシ(10mmスペーサー付)を内前面に付けると底部がバッテリーに干渉して収まりません。
「ガ~ン!やばくね?」とショックでしたが、そこは百戦錬磨の強者(私?)、数々の窮屈なケースでアンプ等を作ってきましたので、縦縦でダメなら縦横で入らないかと試してみたら、今度はドカットの横幅がわずかに足りません。「ガガ~ン!」本格的にやばいです(最初から素直に100Ahのバッテリー買っていればよかったのにね)。な~んて言ってもちゃんと完成しているわけですから解決策はあったのですよ。それは『底上げ』です。
ドカット4700は縦に少し絞った構造になっていて、ケース底面は360×255mmですが、開口部は約10mmの縁(中皿受け)を入れて約395×295mm になっています。ですからバッテリーを底上げすれば設置面積を少し拡大できます。ただし、上げすぎるとコンソール板に仕込んだ大きな バッテリー切断スイッチ(縦60mm+ツマミ部25mm)に干渉するので、底上げ出来るのは25mm程度なのです。
ドカットの蓋が閉まる程度までスイッチ頭部を下げてスペーサーで吊り固定していますので、2~3mmの隙間(余裕)をみて22mm底上げしました。敷いたのはバッテリーが入っていた箱の梱包緩衝材で、柵状にいくつか切断してドカット底部に貼り付けました(バッテリーの動き固定にも同じ緩衝材を使いました)。
この対処でバッテリーも縦横で何とか収まり、アンダーソンコネクタも付けられて、ターミナルブロックとも少しの余裕が出来ました。全体的にキツキツですがバッテリーにもクッションが効いていい感じになりました。これで完成が見えてきましたので、勢いで1000Wの正弦波インバーターも購入しちゃいました(煩悩恐るべしです)。
電流計シャント抵抗の取り付け
使った電流計(電圧計・電力計)は安価(3千円台)なもので、液晶パネルの見えは大変よいのですが、別添の大きなシャント抵抗がむき出しのものでした。8千円以上出せば取り付け可能なシャント抵抗でリモートモニタリング(WiFiやBT)ができる製品等もありましたが、できるだけお安く仕上げたかったので、最低限の機能・精度と耐久性があればいいと思っていました。
問題は大きなシャント抵抗をどうやって取り付けるかでした。手持ち材料で何とかならないかなと思案して、以前ダイソーで購入した「整理トレー(仕切板2枚付)」の仕切板を加工して抵抗の両サイドを挟み、シャーシになる台木(3mm厚の工作材を塗装)に仕切板を両面テープとボルトで固定することにしました。仕切板の底部には立てるためのツバが付いていますので、抵抗をキツく挟んでネジ止めできました。
なお、抵抗の底面と両サイドは4mm厚のシリコンゴムシートを切リ出して絶縁しています。また、挟んでいる仕切板の上部が開かないように台木を通してクイックタイで締め、この抵抗付き台木をドカット内後面に8mmスペーサー(M3)で取り付けました。
ちなみに、電流計の電力線はバッテリー切断スイッチに関係なく常時接続していますので、全負荷のヒューズ(100A)切れでも動作し電力量積算が維持されます。この電流計にはスリープモードもあるので、使わないときはスリープ状態にしてあります。電流計本体との接続線も4ピンコネクタで中継していますので、これを外せば電力線他を完全に切り離すことができます。
ドカットは加工しやすい?
ターミナルブロックやヒューズボックスが付いたアルミ板シャーシとシャント抵抗ブロックはスペーサーを付けてボルト止めで取り付け、パネルマウントの入出力コネクタ類、ファンの排気口を穴開けして取り付けました。丸穴はホールソーとテーパーリーマー、角穴はドリルとカッターを使いました。
ドカット本体はポリプロピレン(高衝撃性コーポリマー)の素材らしいですが、比較的柔らかく大きめのカッターで切削できますね。一旦カッターの刃が入ってしまえば切断は容易なので、角穴とかでもドリルで孔をいくつか開け、ニッパーで切ってカッターが入る程度に拡大すれば簡単・正確に整形できます。
スペーサー止めのボルトには一応の防水を考慮してゴムワッシャーを挟んだりしています。排気ファンは大きく穴を開けていますので防水は無理なのですが、スポンジを挟んだフィルターカバーを付けていますので、少しは雨水の浸入を防げそうです。電源入出力用のパネルマウントコネクタは全て防塵・防水(防滴)のカバー付きです。
前面にシガーソケット(20A)を2つとXT60E(30A)コネクタを2つ、側面上部にインバーター用アンダーソンコネクタ(120A)、下部に充電用アンダーソンコネクタ(50A)を付けています。ドカット内部はコンソール板にUSB充電器ソケットを1つ付け、XT60Hソケット(60A/♀)も1つ引き出して内部に隠してあります。充電用コネクタは出力にも使えますが、負荷側の設計ではないのでヒューズ無しのバッテリー直になっています。
アンダーソンコネクタが大柄なので、小さめなEC8コネクタ(定格100A/最大400A)も検討したのですが、LiFePO4バッテリー充電器がアンダーソンコネクタ(50A)で中継接続するものだったので、そのまま使えるアンダーソンコネクタで統一し、購入した1000Wインバーター接続用にもアンダーソンコネクタ(120A)と丸型端子でケーブルを別途製作しました(製品付属の接続ケーブルは両端に丸型端子が付いた6AWG/60cmのもので未使用です)。
アンダーソンコネクタをパネルマウントする場合は、端子を下向きにすると接続機器側を通常の上向きでコネクトできます。120A版のパネルカバーを上開きにすると端子が下向きの固定になるので、最初は「何でこうなってるの?」と思ったのですが理由がありました(すぐに気づけよ~私おバカ?笑)。接続できればどちらでもいいとも言えますが、完成後に気づいたので50Aのコネクタも上下逆に付け直しました。
使用したシガーソケットはかなりしっかりした造りで、元々20Aのミニ平型ヒューズが付いた13AWGのケーブルが使われていました。XT60Eコネクタは10AWG、アンダーソンコネクタ(120A) は6AWG、充電用アンダーソンコネクタ(50A) は8AWGのシリコンソフトケーブルで配線してあります。このケーブルは耐油・耐熱(-60~200℃)の被覆で極細い多数の素線で出来ているため、ゲージ比較で電流容量が大きめです。また、6AWGや8AWG以上の太いワイヤーでは、標準的なR14やR8の丸型端子では導体が太くて入りきらないので、一回り大きな端子(R22とR14)を使いました。
シガーソケットとXT60Eコネクタはヒューズボックスを経由しますが、ヒューズボックスとの接続は305型の平型端子を使いました(付属の平型端子では電流容量不足でした)。20A以上だと305/312/350型でしょうか。それでも使える電線は導体5.0sqまででしたので、太めの10AWG (5.3sq) はハンダ付けを併用して端子を付けました。
排気ファンを間違って購入?
元々6cmファンを付けるつもりで探していたので、安価で20dBと静音なのが気に入って購入したら12Vではなく5V用でした。「やっちまったよ~」と思いましたが、幸い20年以上前に購入した「DC-DC降圧キット(5V)」が未使用でありました。何かの製作のついでに「お手軽だね!」と秋月電子からゲットしたものでした。パーツ箱の肥やしになっていましたが、20数年の時を経てついに出番がきましたね!
このキットを組み立ててテストしたら問題なく動きました。TO-220の7805も手持ちであったので簡単に自作もできたのですが、DPAKの7805Sを使ったキットの方が表面実装パーツで無駄なく小さくできています。この小さな基板はターミナルブロック等と一緒にアルミ板シャーシに取り付けました。ファンの方も3500回転ですが静かです。
ドカットにインバーターを内蔵するわけでもないので(そもそも入りませんけどね!)、ケースファンはEvenBetterとも考えていました。LiFePO4バッテリー自体は熱安定性や安全性も優れていますが、夏場の気温等によりバッテリー温度が40~50℃以上に上昇しないように注意する必要もあります。
車内や屋外では蓋を開けたり日陰に置いたりも出来ますが、少しでも換気(排気)できればさらに良いかと思って小型ファンを装備しました。バッテリー電源で大きな扇風機を回してバッテリーを冷やすという「なんだかなぁ~」の空冷もありますけどね。
後部が重いのでバランスベルト使用
バッテリーは2つともドカット後部に寄せて設置していますので、そのまま持ち上げると少し傾きます。そこで以前ドカット4500でも製作したバランスベルトを作って装着しました。持ち手にサドルバンドを取り付けてベルトを接続するだけですが、これだけで水平に持ち運びできて、常時装着したままでも前面からドカットの蓋を開けることができます。
現状でポータブル電源本体だけ製作しました。走行充電やソーラー充電は今後ということで、マニュアルで充電して持ち出すようになっています。ドカットを含む総重量は12kg超でやはり重いのですが、電源容量を考えればこんなものでしょう。車への据え置きではなく持ち運び移動できるものにしたかったので、私的には100Ahが限界ですね(200Ahだとバッテリーだけで20kgです)。
並列接続のバッテリーで容量を稼いでいるので、3~6ヶ月毎の定期的な再バランス処置(バッテリー個々に満充電して並列に再構成)が少し面倒です。200Ah以下なら最初から単体のバッテリーを使うのがいいのでしょうね。今回は事情もあって並列構成ですが、同容量の市販品ポータブル電源に比べれば、別途購入の1000Wインバーターを含めてもお安く出来ました。とりあえず想定どおり完成しましたので「めでたし、めでたし」なのです。
あとがきの与太話
撮影ではストロボの代わりになるかなとLEDライト(作業灯や車輌の補助灯向け?)をバッテリーに繋いで4灯で使ってみたのですが、やや黄色みのある光色であまりうまく写らなかったです。仕様では1灯1200lmで色温度6500Kらしいですが、光束1200lmはちょっと盛ってる?かもですね(600~800lm程度の感じ)。ホワイトバランスの調整や何かフィルターすればビデオライト的に使えると思いますけどね。
1灯あたり16個のLEDで構成されているライトなんですが、12V用で12Wの商品説明だったので「ほんまかいな~?」でした。実際には4灯で1.82A(24W)程消費するようです。1灯あたり455mAですから単純計算でLED一つあたり約28.4mAです。結構明るいのですが1.0Aも流れてませんけどね(電流計がおかしい?)。オーディオ機器等に付ける3mmLED等のインジケータでは、自分は5mA以下(通常は3mA程度)で使っています。特に高輝度の青色LEDとかは2mA以下じゃないと眩しいですよね。
バッテリー2並列で単体50Ah以上(~100Ah/1280Wh)使えるか試してみました。900W (AC100V) のセラミックヒーターを使って出力電力を測定。積算93Ah以上使用で電圧11.5V以下まで低下してインバーターが時々悲鳴(警告)をあげ始めました。ヒーター出力を半分の450Wにすると電圧も少し上がってまだ元気に点灯していましたが、95Ah (1200Wh) を超えたので「まぁいいか!」とテストを打ち切ってチャージしました。容量詐欺もなく良いバッテリーのようですね。ちなみに6AWGの配線ケーブルはほんのり暖かくなる程度の発熱でした。ただしインバーターはファンが回るとうるさいのよねぇ...