fragments@my passion

情熱のかけらの記録

TDA7498 Dual Stereo (4ch) Power Amplifier ~ スイッチング電源版

(TDA7498 Dual Stereo (4ch) Power Amplifier スイッチング電源版)2019年12月製作(完成)~備忘録~ 

f:id:unison3:20200108213758j:plain

 
※このアンプはトランス式電源でケーシングし直しました。こちらに 製作記事 をまとめました。パワーアンプ基板自体の改造は、このページ記載の内容から一部だけ変更して転用しました。

バイアンプ実験にと勢いで中華製のお安いパワーアンプ(TPA3116×2のPBTLで100W×2)を2台も仕入れてしまったのですが、ケースが小型で筐体も軽く、バイアンプで使うと4本のスピーカーケーブル(Canare 4S6G)や2本の入力変換ケーブル(Mogami 2534)の重さで傾いてしまい全く不安定。ゲインを下げればノイズも気にならず、プリアンプ部のオペアンプをOPA637に替えたら音も良いので、どうしたものかと思い、お遊び半分で別途まとめてケーシングしようとしたのですが...

f:id:unison3:20191222224409j:plain

基板の改造でパーツ交換や入出力の構成部品を外したりしているうちに、PCBの回路パターンを一部剥がしてしまいました(泣)。
「ありゃりゃ~!」とか「やっちまったぜ!」と嘆きながら、どうにか音が出るように改造&修復したのですが、どうにもヤワなPCB (基板)で、回路パターンや構成パーツも気に入らず、懲りずに別の中華アンプ基板を仕入れて、デュアルステレオ構成の4chアンプを組み立ててみました。

新しく調達したのは、TDA7498 (STMicroelectronics)を使った出力100W×2(4Ω/32Vの場合)のお安いアンプ基板を2つです。この基板を改造してケースにまとめて収納し、デュアルステレオアンプにしたわけです。電源は先に製作している2系統独立出力のスイッチング電源です。出来上がったアンプは、ゲインを+25.6dBの最低設定ならノイズもほとんど気になりません。出音は低域の量感もあり特に中高音が伸びやかで繊細。柔らか目な聴きやすい音です。このアンプは単独のステレオアンプ×2台として電源も分けて運用できるのですが、ボリュームはチャンネル毎の4つではなく、ステレオセット毎で2つにしています。そのため、左右chの誤差精度がよいらしいALPSの27型ミニデテントボリューム(2連/50kΩ/A)を採用しました。

(アンプ部)
[ 機能構成図 ] [ TDA7498標準回路 ] [ LCフィルタ最適化 ] [ レイアウト ]

(外部電源)
[ 電源構成図 ] [ レイアウト ]

機能構成

アンプ部筐体は、TDA7498アンプ基板×2と電源入力部、遅延ミュート用基板×2の全部で5つの基板で構成しています。外部電源の入力はDCジャックで24V/6.3Aが2系統です。アンプケースにも2回路分の電源スイッチを後パネルに付けましたので、外部電源およびアンプ筐体それぞれで電源ON/OFFできるようになっています。

アンプ基板は出来合の完成品なのですが、元々ボリュームや入力ジャック等は付いていないシンプルな基板ですので、ケースに別途RCAジャックやスピーカーターミナル、ボリュームを取り付けました。電源は24Vを2系統入力し、それぞれ 1000μF/50V × 3 の 3000μF(MUSE KZ) を挿んでアンプ基板に供給しています。電源入力部の基板にはスパークキラーも挿入しています。

f:id:unison3:20200108213828j:plain

使用したアンプケースは、摂津金属工業のCM-70というもの。だいぶ以前に購入したものですが、少しヤワで軽い造りが気に入らず未使用で保管していたものでした(無駄使いしてますなぁ~)。これに3mm厚のアクリル板(スモーク)でフロントパネルを追加して格好よくしました。元々フロントパネルが奥まっているケース形状のため、ボリュームのツマミをアクリルパネルに貫通させる加工等が必要でしたが何とかうまくできました(手作業なので位置合わせが繊細なのですよ~)。

 実はこのアンプ基板で製作する前に、別のTDA7498アンプボードでも製作しているのですが、ボリュームや入力ジャックも付いた一般的な出来合のボードでしたので、ケーシングではそれら機構部品を取り外す手間がありました。LCフィルタの調整等で良い音が出るようになったのですが、今回使用したボード程シンプルではないため、いかにも改造しました的なところが色々あるのですね。今回の基板は入出力端子や電源端子など最低限の端子しか付いていないため、むしろケーシングでは不要パーツを取り外す手間がなく、好きなボリュームや入出力部品を使って好みのアンプに仕上げ易いですね。
 

TDA7498アンプ基板を改造

このアンプ基板のオリジナル構成は、入力コンデンサが1μFで、LCフィルタのパワーインダクタが22μH、コンデンサが0.47μFの組合せでした(8Ωスピーカー向けの構成)。使用パーツも悪くないようで、電源コンデンサにもSANYOの1000μF/35V(WX)が4本使われてましたので、特に増強することもないようです。ヒートシンクもネジ2本でしっかり固定されています。オリジナルの状態で8Ωのスピーカーで音出ししてみましたが、ゲインを+25.6dBの最低設定だとノイズも気にならない程度。かなり良い音が出てきて「このままでもいいんじゃない?」と思わせるものでした。また、電源ON/OFFでのポップノイズも他のTDA7498基板(中華製)に比べて小さいですね。

f:id:unison3:20200108225805j:plain f:id:unison3:20200108225814j:plain
オリジナルのアンプ基板(@1729円)

 なお、この基板の回路構成はデータシートの参考回路例とは若干異なるようです。入力側フィルムコンデンサはシングルエンド入力に割り切って+側のみの2つです。TDA7498は差動入力になっているのですが、他の多くの中華基板ではデータシートのアプリケーション回路に倣ってシングルエンド入力でもフィルムコンデンサを4つ使ってますね。ノイズの問題はシングルエンド入力に起因するところが大きいので、バランス入力のアンプ基板も出して欲しいところです。バランス入力ならノイズに悩まされることもないと思うんですけどね。

(1)入力コンデンサ変更
オリジナルの1μFフィルムコンを 1μF(50V/WIMA MKS02) に交換し、基板裏にも 2.2μF (25V/Rubycon PMLCAP) をパラで追加して、合計3.2μFとしました。TDA7498の入力抵抗値がデータシートの60kΩ(typical)とすると、低域時定数はカットオフ周波数で 0.82Hz になりました。オリジナルの1μFの場合は 2.66Hz です。2.0μF(カットオフ周波数1.3Hz)でも試してみたのですが、3.2μFにすると格段に良くなります。低域の反応や量感が大きく増して、安定感や迫力のある出音バランスになるようです。また、薄膜高分子積層コンデンサのPMLCAPはカップリング(交流結合等)に使っても音が良いように思いました。今まではオペアンプの電源バイパス用に使っていただけでした。

f:id:unison3:20200108213734j:plain f:id:unison3:20200108213742j:plain


(2)出力LCフィルタのコンデンサ変更

TDA7498データシートにある Fig.24 の8Ωスピーカーに最適とする L=33μH, C=0.22μF の構成ならカットオフ周波数は 59.06kHz。L=22μH の場合は C=0.33μF で同じ遮断周波数になります。L=22μH, C=0.22μF なら 72.34kHz になりますね。Fig.19 は L=22μH, C=0.68μF での6Ω向けLCフィルタ構成回路例で、8Ω用構成と脚注されている L=22μH, C=0.47μF ならカットオフ周波数は 49.49kHz になります。Fig.24の8Ω用最適構成とはインダクタが異なりカットオフ周波数も違っています。

TDA7498のデータシートを参考にどういう出音の違いになるか、インダクタは22μHのままでコンデンサを 0.47μF, 0.33μF, 0.22μF と替えて実際に比べてみました。この辺はよくわからないので実聴チェックです。STMicroelectronics が最適としている 0.47μF だと確かに低音と中高音の出方のバランスが良く聞こえます。これを 0.22μFに替えると高域の伸びが良くなりますが、相対的に低音の量感が減る感じですね。0.33μFにすると、かなり好みの音質で高域の伸びもあり低域も出てきますが、やや腰高なバランスにも思えます。

f:id:unison3:20200108213822j:plain f:id:unison3:20200109002509j:plain

結局、TDA7498で8Ωスピーカー向けなら、L=22μH では C=0.47μF、L=33μH なら C=0.22μF がやはり良さそうです。とはいってもコンデンサが公称の容量どおりではないのでややこしいですね。±10%程度の誤差がありますし、WIMAの新品はほぼ大きめな容量です。オリジナルの黄色いコンデンサを取り外して計ってみたら、(選別しているとは思えないのですが)0.47x台でほとんど誤差がありませんでした。どおりでバランスがいい出音なわけです。0.47μFが0.5xx台になると中高域の伸びやかさに微妙な差が出てきますね。幸いWIMA MKS2/0.47μFが複数手持ちでありましたので、選別して0.47μFに最も近い4つで交換しました。なお、後段の EMI/C-RC SNUBBER 回路はスピーカーインピーダンスに関わらずオリジナルのままでいいようです。

(3)その他の変更

このアンプ基板はボリュームを3時半以上に回していくとノイズが大きくなります。そのため、入力インピーダンスを一定化したらどうかとボリューム基板に負荷抵抗240kΩを付けています。ボリュームは50kΩよりも20kΩの方が良かったかもしれません。なお、ボリュームからボードへの入力信号線はシールド線ではなくテフロン被覆線を三つ編みして繋ぎました(入力端子は3PINコネクタ)。またケース組み込みでは、アンプ基板のGNDラインからシャーシアースしています。


ミュート端子によるポップノイズ対策

電源ON/OFF時のポップノイズ対策には、アンプ基板に出ていたミュート端子にヘッダピンを立てて利用しています。ミュートコントロールには、μPC1237を使ったスピーカー保護用リレー基板を使いました(この基板KITは激安@476円!)。ミュート端子への配線は保護基板裏のリレーの足と直にハンダ付けです。通常のスピーカー保護接続とは逆で、電源OFF状態ならミュート端子がショート状態、電源ONで遅延時間後にミュート端子がオープンになるように制御できればよいので、保護基板上のスピーカーとの入出力端子は使わず、アンプ基板からスピーカー出力端子は直結です。ちなみに、基板上のミュート端子は TDA7498の "21:MUTE" へのプルダウン(Hi/Low)でスイッチされ、Hiの印加電圧は "26:VDSS(19:VDDPWの出力)" の3.3Vが使われているようです。(TPA3118を使ったお安いアンプ基盤のミュートも同様なやり方みたいですね)

f:id:unison3:20200108213807j:plain f:id:unison3:20200108213814j:plain

TDA7498やTPA3116/3118等のBTLアンプでは、ミュート端子を使った方式が簡単でよい結果が得られるようです。遅延効果を出すにはトランジスタコンデンサを使っても簡単な回路でできそうでしたが、いつかアンプ製作に使おうと保管していたスピーカー保護回路基板があったのでお手軽に利用しました。結果として電源ON/OFF時のポップノイズは皆無になりました。


外部電源とDC電源フィルター

このアンプの電源は、現状では先に製作の「スイッチング電源ボックスを使っています。DC24V/6.3A 出力の基板タイプ電源(TDK-LAMBDA/ZWS150BAF-24)を2つ内蔵していますので、1つのパワーアンプ基板あたり6Aまでの電力供給が可能です。なお、電源ボックスとパワーアンプの間に、同じく先に製作の「DC電源フィルター」を挿むと、フィルター回路で使っているコイル最大電流の関係で5Aまでの電力供給になります。

電源供給にDC電源フィルターを挿む場合は、高周波スイッチング電源用チョークコイル(HKコイル)とノーマルモードノイズ除去用コイルの2つを使う回路を経由させていますが、フィルター回路内に逆接防止のダイオード (45V/10AのSBD) を含んでいるため、わずかな電圧降下があります。そのためスイッチング電源基板の出力電圧を24.5Vに微調整しています。

実は、今回製作のパワーアンプの(バイアンプ駆動での)音質が予想以上に良かったため、その内にスイッチングではない電源内蔵で1つのケースにまとめようと思い、トロイダルトランスも調達してあるのですが、まだアンプケースを思案中なので製作はいつになるやらです。

改造後の音の印象など

お安く小さなアンプ基板ですが音は良いですね。低域の量感もあり解像度も高く中高域は柔らかで繊細な伸びやかさがあります。一昔前のメーカー製アンプよりもいい音に思えます。昔のメーカー製アンプは「何とか新回路」とかいっても、一枚ベールを纏ったような出音のものが多かったように思います。それらに比べると音の出方がストレートで解像感やクリアさがあります。パンチ力がある音の出方ではありませんが、ホームユースでは出力も不足と言うことはないですね。

1つのアンプICを使ってステレオアンプとして回路設計されているので、左右の出力音量差もほとんど無く音像定位も良いため、バイアンプ&バイワイヤリングとしても問題なく使える感じです。また、前作の (AD812+TPA6120)アンプ(ラインプリ)との相性も素晴らしい!音源に直接繋ぐより断然いいですね。音の厚みや広がりのある音場感と音楽性は、(比べてみると)パワーアンプ単体では十分には表現できないように感じます。とはいってもお値段を考えれば単体アンプとして相当いい音が出てますけどね。

f:id:unison3:20200108213844j:plain f:id:unison3:20200108213850j:plain

ただし、サーというホワイトノイズがあって、ゲインを最小(+25.6dB)にしてもスピーカー(SPL=89dB)に耳を付けるとわずかに聞こえます。スイッチング電源を使っているせいもあるでしょうが、+31dB以上の高ゲイン設定だとはっきり聞こえます。自作の真空管アンプでもわずかにノイズが出るものがありますが、ほとんどは真空管が発するものだったり、わずかなハムノイズなので質が違います。

実は、バランス入力できる100Wクラスの(PAやモニター向等の業務用)パワーアンプCLASSIC PRO CP400」もバイアンプやBTL駆動用に2台試験調達したのですが、これらディスクリートパワーアンプでは無信号時のノイズはなかったですね。電源にトロイダルトランス使用のアンプですが無音ですな。そのかわりファンの音が少しうるさいので静音ファンに交換しました。

f:id:unison3:20200109210014j:plain f:id:unison3:20200109210031j:plain

バランス入力のCP400は、シングルワイヤのステレオ接続ではダンピングが効いたやや硬めの音質ですね。低音から中高音までバランスよくスピーカーを鳴らしますので、評判どおりホームユースでも音はいいと思うのですが、左右2台のバイアンプ&バイワイヤリングでスピーカー駆動すると格段に良くなります。セパレーションや音場感が向上し、アンプ出力(パワー)に不満がなければ、これで十分かなと思わせます。価格を考えたらCP400はかなり良いアンプですね。大きな電源トロイダルトランスや厚みのあるフロントパネルで重量もあり、お値段以上の重厚さがあります。

TDA7498のバイアンプ駆動では、CP400に比べて解像感があり繊細で柔らかな音質です。低域はシングルワイヤに比べて若干締まった感じになりますね。音の厚み(密度感)は意外にもCP400と差がない感じです。これはプリアンプを経由していることで補われているのでしょうか。セパレーションや音場感が良くなるのはCP400同様ですが、ホームユースではこういう柔らかい音質が聴き易いかもしれないとも思わせます。ただし、低域の駆動力(力強さ)は CP400 のバイアンプ駆動が優っているように感じます。

今回のアンプ製作は、TDA7498をシングルエンド入力で使う出来合の基板を使いましたが、バイアンプ駆動では予想以上の音質で気に入りました。わずかなノイズが玉に瑕ですが、業務用アンプでも少々ノイズが出るものもあるので、今回のアンプ程度なら許容範囲なのですが、完璧な静けさというか静寂感が欲しいところです。TDA7498自体は差動入力になっていますので、バランス入力の方式で回路設計すればノイズにも悩まされないのではないかと思うんですけどね。

TDA7498やTPA3116/3118等のアンプICはカーオーディオやアクティブスピーカー向けに使うとコンパクトで使い勝手が良いのでしょうね。お安いアンプ基板でしたが、ケーシングや改造でアンプ基板の倍以上のコストがかかってしまいました。「何やってんだかな~」の気分ですが、お遊び(お楽しみ)半分で製作したアンプにしてはいい音で出来上がったので、とりあえずバイアンプ&バイワイヤリング用等でしばらく使ってみることにしています。

f:id:unison3:20200108213902j:plain

試聴は、DACからバランス出力、(AD812+TPA6120)アンプ のバランス入力/シングルエンド出力(RCA)、TDA7498アンプからバイアンプまたはステレオシングルで2-WAYスピーカーに接続、の経路で音出し確認しました。

今回のアンプ製作や(業務用)バランス入力アンプのテストでは、自分で製作していながら (AD812+TPA6120) アンプ のプリアンプとしての性能・音質の良さを再認識しました。どんなパワーアンプと組み合わせても、音場感が向上し臨場感や雰囲気(音楽性)のある音に変えてくれるのでした。