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情熱のかけらの記録

手挽きコーヒーミル

(手挽きコーヒーミル)2022年5月~備忘録~

所有する手挽きコーヒーミルの覚え書きを少し綴ってみました。手挽きのコーヒーミルは、ヴィンテージ感やクラシカルな佇まいが好きで使っているのですが、最近はハンディタイプでアウトドアにも最適な高性能ミルの人気が高いようですね。セラミックやステンレスの刃が多いですが、特にステンレス刃のミルは見るからに切れそうで、ピカピカの削り出し金属刃はモノとしての造形の美しさもあります。興味や物欲も湧いてきますが、これら高性能ハンディミルはお値段も高めですし、手元のミルで「普段使いで特に困ってないから!」「所有する喜びより"物の用"だよね?」と自分に言い聞かせて煩悩を抑えていたのですが、、、。気づいたら何か黒い円筒形のものが手元にあるではないですか!?

タイムモア TIMEMORE C3 (評判どおりの優良品!ですな)
ボンマック BONMAC D-2
フソー MY BLEND W-301
プジョー ノスタルジー
コーノ KONO F702 (別ページ)


ボンマック BONMAC D-2 / ラッキーコーヒーマシン製

サイズ(mm):W135×D135×H295
重量:1,030g
容量:ホッパー/約40g、引き出し/約25g×2

やや大型の古いコーヒーミルで現在は既に廃番ですが、未使用保管品という綺麗なものを入手しました。このミルの粉受けは引き出しが2段あって、1段目(上)の引き出しを抜くと2段目(下)に挽いたコーヒー粉が入ります。両方の引き出しを使うと2倍の量を挽けるというわけです。挽き目の調整は、台座下部の穴から付属の調整金具や柄の長いマイナスドライバー等で行えます。

このミルは少々凝った軸受け構造をしています。構造的には内刃は両軸保持(2点支持)になっているのですが、刃の下側には軸が出ていませんので、実際には軸受けを貫通等して保持されているわけではなく、スプリングを通した調整ボルトの先の小さなボール(鉄球)で、内刃の中心を押さえて支える構造になっています。

そのため下部軸受けのボールベアリング効果もあって、回転がとてもスムーズで軸ブレがないため粒の揃った粉が挽けます。ただし、挽き目の調整を(粗びき側に)緩くし過ぎると調整ボルトが簡単に外れてしまいます。スプリングが付いているので、ボルトとその先の小さなボールも飛び出して紛失しそうになります。元に戻すボルト締めもスプリングを押しながらの作業なので、慣れないうちは少し難儀しました。

さて、このミルの臼刃や挽き味ですが、刃は高硬度の鍛造鋼で金色にコーティングされています。切れの良さそうな刃ですのでスムーズな回転で効率よく挽けます。豆への喰い付き(巻き込み)は、臼刃の大きさや構造によるのかフソーやコーノのミルの方が若干よい感じですね。軸ブレが少ないので、粒度のバラツキも良好で微粉も少ないのですが、挽き目の設定では粗挽きには調整が難しいように感じます。(出来ないわけではないですが)ボルトの調整幅が小さめで調整ボルトも外れやすいのです。

挽き目の調整は、ボルトを目一杯に締めてハンドルが回らなくなった位置から緩めていくわけですが、ミルを横にしてハンドルが自然に落ちて回り始める緩さでは、マキネッタ用には十分細かいのですが、エスプレッソマシン用の極細挽きには不十分なようです。ここから少し締めてハンドルが落ちる途中で止まる程度で挽くと、非加圧フィルタでも使える粉にできます。この時のメッシュはデロンギKG366Jでの挽き目[3]程度になります。ただし回転中は少し臼刃の接触抵抗を感じますので、刃を痛めそうで常用しにくいですね。細挽き~中挽き以上なら、臼刃の擦れる音もなく静かに軽く回ります。

このコーヒーミルは大きさの割にやや軽いので、挽いている最中の本体の押さえに気を遣います。また、引き出しの押さえバネがありませんので、あまり激しく動かすと引き出しが出てきたりします。元々の販売価格はわかりませんが、今では(中古品は)かなりお安く取引されているようです。お値段以上に刃も機構もしっかりした製品だと思うんですけどね。

現在は中細挽きに調整してハンドドリップ用に時々使っています。ホッパーは蓋がないタイプですので、豆の飛び出し防止や使わない時の埃よけに、紙皿を円形に切って簡易な蓋を作成しました。見た目も立派で構造も凝っていますので結構気に入っているのです。


フソー MY BLEND W-301 / 扶桑軽合金製(現:株式会社アーレスティ)

サイズ(mm):W160×D150×H270
重量:1,780g
容量:ホッパー/約40g、引き出し/約35g

やや大型の古いコーヒーミルで、既に製造終了している入手困難なモデルの一つです。使用品ですが状態の良い品を入手できました。手挽きコーヒーミルでは豆を挽く際に本体を固定するための工夫が必要ですが、MY BLENDシリーズの多くは底面にゴム製の強力な真空吸着盤(吸着力65㎏)が付いていて、平らな面であれば吸着ストッパーでガッチリ固定されますので、ハンドルを楽に回すことができます。

コーヒー豆は一度に40g前後の量を挽くことができます。粉受けの引き出しも35g以上入るようです。金色にコーティングされた硬質な鍛造臼刃と吸盤で固定された本体により、安定した粒度で挽くことができます。製造は1970年代ですので既に40年以上経過していますが、コーヒー豆を挽くという機能と性能は全く問題ありません。現在一般的に入手可能な手挽きコーヒーミルと比べても、造形デザインを含めて、その品質と性能は侮れない素晴らしいものです。

このコーヒーミルは入手直後に分解清掃しましたが、底部のナットを外すと本体はバラバラになりますので、上部ホッパーのドーム部を外せば機構部分を取り出せます。

軸受けは上部のみの片軸保持(1点支持)ですが、臼刃の噛み合わせと軸受けの(製造)精度が良く、回転での軸ブレがほとんどありません。このあたりは日本製品質というか、同じ片軸保持のプジョーノスタルジーよりも断然精度が高いですね。

粒度の調整はピンロック式です。ハンドル下の固定ピンを持ち上げダイヤルを回してセットします。軸のうちピンロックダイヤルとハンドルが嵌まる部分は軸の側面が削られて円形ではないので、ピンロック金具やハンドルが回転中にズレることがなく、ハンドルも取り外し易くなっています。コーノF702やボンマックD-2もハンドル等の嵌め込み部分は同様ですが、プジョーノスタルジーは、ピンロックダイヤルやハンドル嵌め込み部分まで円形でネジ切りしてあるので、回転中にピンロック金具やダイヤルがわずかにズレたり、ハンドルが締め込まれていく可能性がありますね。

このミルの挽き味はとても良いですね。プジョーやザッセンハウスより良いという方もいます。軸ブレが少なく豆の巻き込みも良いので、軽くスムーズに効率よく挽けます。現用している手挽きミルでは、本体も安定して最も気持ちよく挽けるミルです。別に書いてますが、プジョーのノスタルジーが『ダメダメちゃん』なので、手挽きで時々使う時は、もっぱらフソーW-301かボンマックD-2なのです(綺麗なコーノF702は普段使うには勿体なくて飾り棚の中です)。お安いセラミック臼刃のミルとは段違いの挽き味ですし、硬質な鍛造刃も欠けたり劣化しにくいので、しっかり手入れしていれば一生ものでしょう。

挽き目の調整は、ダイヤルを目一杯に締めてハンドルが回らなくなった位置から、ダイヤルの切り欠き2つだけ戻した位置が0点(挽き目[1]の原点)ですね。1つ戻しではまだ臼刃が締まってキツいですが、2つ戻せばハンドルはスムーズに回ります。この状態で深煎りの豆を挽くと極細挽きの粉にできます。

普段エスプレッソマシン用には、主にデロンギのKG366Jを使っているのですが、デロンギでの挽き目[3]程度のメッシュになりますので、非加圧式フィルターでも粉の量とタンピングを調整すれば、クレマのあるエスプレッソを抽出できます。微粉も出ますが手挽きですので少なめですね。写真のエスプレッソ抽出は、deviceSTYLE TH-W030 で非加圧式フィルターを使い、このミルで挽いた16.5gの粉です。試しに使った豆は特別よいモノではなく、焙煎してから1ヶ月以上経過しているものです。(写真を撮っていたら出し過ぎました!ルンゴ~)

このコーヒーミルは大きさや重量もあり立派な外観ですが、なんといってもデザインが秀逸です。粉受けの引き出しは天板と底板の間に嵌まる形ですが、天板側に引き出しの支持板が付いていて、押さえのバネもありますので隙間無くスムーズに出し入れできます。

底面の吸着盤を含め丁寧な設計で機能美のある製品と思います。おかげで他のフソーミルにも興味が湧いて欲しくなりますね。現在は細挽き中心に調整してマキネッタやハンドドリップ用途に時々使っています。


プジョーノスタルジーナチュラル)/ PEUGEOT NOSTALGIE 22778

サイズ(mm):W130×D130×H210
重量:665g
容量:ホッパー/約40g、引き出し/約25g
材質:本体/木製(ブナ), 刃/鉄, シャフト/ステンレス

プジョー(Peugeot)は、1810年から金属加工に進出し1840年にコーヒーミルの生産を開始したフランスの老舗メーカーです。自動車でも有名ですが車の生産は1882年からですので、40年余り古くからコーヒーミルを造っていることになります。

このノスタルジーはヴィンテージ期に製造されていたコーヒーミルの復刻版で、オリジナルは1840~1936年頃に作られていたようです。いわばプジョーグラインダーの原点であり、約160年の歴史に培われた精密な技術が受け継がれているとのことです。

「強靭で耐久性のある刃とコニカル式の二重螺旋構造でスムーズに豆を粉砕し、軽いハンドルタッチで非常に軽快な挽き心地です。」「本体がどっしり安定して動きにくいのでストレスなく挽けるミルです。」

と、こんな風な宣伝文句や良く言う人も多いですが、私的には、このコーヒーミルは "お値段の割りに" イマイチの『ダメダメちゃん』なのです。あくまで個人的な嗜好と国産の良質なミルとの比較で評価していますので悪しからず(個体差もあるかもしれませんしね)。

まず、刃の軸受け精度があまいです。軸受けは上部の片軸保持(1点支持)ですが、同様な保持構造のフソーW-301に比べてガタつきがあり少し軸ブレします。軸ブレは臼刃の噛み合わせも揺らしますので、特に中挽き~粗挽きでは粒度のバラツキが大きいですね。

使用感(挽き味)はどうかというと、ハンドルは軽くスムーズに回りますが"ガラガラ音"が気になります。これはステンレス製のシャフトとドーム部および軸保持部の鋼材の反響もあるようで煩く感じます。臼刃自体は硬質な鉄系の材質で切れは良さそうです。摺り潰すというより切り砕く感じで、豆の巻き込みも悪くないので「コーヒー豆を挽いてるぞ!」のゴリゴリ感はありますね。

粒度の調整はピンロック式です。ハンドル下の固定ピンを持ち上げ小さめのダイヤルを回してセットしますが、ノスタルジーはピンロックダイヤルやハンドル嵌め込み部分まで円形のままでネジ切りしてあるので、回転中にピンロック金具やダイヤルがわずかにズレたり、ハンドルが締め込まれていきますね。これは構造上の問題でしょうか?(ザッセンハウスも同様なんですけどね)。

挽き目の調整は、ダイヤルを目一杯に締めてハンドルが回らなくなった位置から、ダイヤルの切り欠き2つ戻した位置が0点(挽き目[1]の原点)でしょう。臼刃の噛み合わせは精密に良くできているので、(最初の締め込み加減次第ですが)1つ戻した位置でもハンドルは回ります。ただし、かなり締まった状態なので自重ではハンドルが落ちず、そのまま常用するのは刃を傷めそうです。

このミルは臼刃をやや締めた挽き目が安定していますので、中挽き~細引きに向いているように思います。極細挽きもできそうですが、エスプレッソマシン用に挽いたことはないですね。細挽きはマキネッタ用に使ったことがある程度で時々のハンドドリップ用です。

筐体内部の臼刃端は剥き出しで周囲のガードもありませんので、粉受けの引き出しに粉が落ちるまでに盛大に飛び散りやすいですね。引き出しも高さ(深さ)が足りないし、側板も厚すぎるようで飛散した粉が縁に乗ってきます。内部だけでなく、引き出しを取り出すときにも粉が溢れますので、掃除が面倒で困ったものです。手持ちの他のミルではプジョー程は粉が飛び散らないですね。

そこで、底板を外して粉の排出部分(臼外周部の窪み)にペットボトルを切り出してスカートを着けてみました。これで引き出し外への粉の飛び散りも緩和されました。

筐体もどっしり安定はしてませんね。さほど重くないので回転中は押さえをしっかりしないと動きます。また入手したノスタルジーは底面に滑り止めが無かったので、大きめのクッション材を貼り付けました。

結局、このミルはあまり出番がなくお飾り状態です。結構お高く販売・取引されてますが、お値段に見合った"物の用"としては『どうなんでしょう?ダメダメちゃん』って感じです。悪い物ではないとは思いますけどね。