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情熱のかけらの記録

真空管ラインアンプ+ヘッドホンアンプ(1)

(12AU7 K-Current Feedback)  2017年12月製作(完成)~備忘録~

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デジタルオーディオが主役の今となっては、プリアンプの出番は必然ではなくなっていますが、デジタル音源から高精度にアナログ変換してパワーアンプに直結した『純度の高い音』とは別に、鮮度は落ちても雰囲気のある芳醇ともいえる音が欲しい時もあります。

実はこのラインアンプの製作は二回目です。9年程前(2008年)にUSBオーディオ(DAC)を内蔵した真空管ラインアンプを製作しました。当時はPCオーディオが流行り出した頃で、リビングのステレオセットにもPCからのデジタル音源を追加しようとしたのでした。アナログのレコードプレーヤはすでに取り外されて物置にありましたので、プリアンプといよりライン信号を増幅するだけのラインアンプ兼USB付き入力セレクターといったもので、真空管らしい柔らかで雰囲気のある音にしたかったのでした。
 

9年前(2008年)に製作したラインアンプ

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当時、MJ誌のバックナンバーを読み返していて、長真弓さんが書いていた『SP盤再生重視型コントロールアンプ』のラインアンプ部がよさそうに思えて参考にしました。初段カソード電流帰還、2段目カソードフォロアで出力を取り出すシンプルな回路ですが、歪率等特性が良い結果を実験されています。興味を持ったのは、初段の局部帰還のみであることと、出力インピーダンスが低いことですが、トランジスタバッファでヘッドホン出力を組み合わせるにもよいと思ったのでした。実際、ヘッドホン出力にはダイヤモンドバッファを組み合わせました。

[ 回路図 ] [ 回路ブロック ] [ レイアウト ] [ 実態配線図 ]
※いずれもPDFファイルです。

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ラインアンプ回路自体は少しの定数のみ変更しただけでしたので、特性も良く残留ノイズや安定性なども全く問題ありませんでした。
ラインアンプ部は +12~20dB の丁度良い増幅度ですし、帰還レベルのコントロールで左右バランス調整にも利用できます。

出力コンデンサはClarityCapの3.9uFを使い、完成後にロシア製オイルコンデンサ(K40y-9/0.047uF)もパラってみましたが、中域の厚みは増すようでしたが、高域の伸びやかさが硬く感じて取り外しました。

f:id:unison3:20190627030732j:plainこのラインアンプの音は、歪み率の低さと(あくまで真空管アンプとしてですが)カソードフォロアからの低インピーダンス出力のせいか、広帯域・高解像な印象でした。真空管らしい温かみのある音質(甘い音質)というよりも、切れの良いダイナミックな感じです。初段の電流帰還のみのせいか、低域から高域まで抜けがよく、薄いベールを纏ったような小綺麗な音ではなく、とてもクリアな音がセパレーション良く出てきます。それでいて高域のシャリつく感じもなく小さな音までよく聞こえてきます。真空管らしくない少し堅めの音質ですが音のよい回路だと思います。特性の良さが出ているのでしょうか。プリアンプは本来こうした味付けのない端正なもので、存在感を強調しすぎないものがいいのかもしれません。ただ、自分の欲しかった音は、もう少しだけ真空管アナログらしい柔らかさや艶のある粘るような繊細な音でした。といって気に入らなかった訳ではないのです。

(ヘッドホン出力)

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簡単なダイヤモンドバッファなのですが、ドライブ力もあってなかなかいい音がするものだと感心しました。癖のない出音と伸びやかさでスケール感があります。真空管式ヘッドホンアンプのトランスを通した音も滑らかで温かみがあり好きなのですが、真空管トランジスタバッファのようなハイブリッドな音も悪くないです。抵抗にNS-2Bを奢っている部分もあってか、太めで芯のしっかりした音が出ているように思いました。

当初出力コンデンサには低ESRのニチコンHZ(ERO MKC1862/0.1uF/100Vをパラで接続)で製作しました。このHZは小型にできていてPCのマザーボード用で有名ですが、音響用に使っても侮れない高音質です。低音から高音まで良く伸びて抜けが良く高分解な音が出ます。それでいて中域も薄くならずしっかりしています。ただし、初めての音出しでは解像度高く暴れた感じの音で「何じゃこりゃ!」の印象でした。少f:id:unison3:20190627030838j:plainし聴き易くなるかと思い、出力部にCRで高域補正を入れ、我慢して2~3日ほど鳴らしているうちに落ち着いてきて、これはこれでいい音なのではなかろうか?とプラセボ効果のような気分になりました。しかし結局はFineGoldに付け替えました。FGにして最初の音を聴いたときは、少しもっさりした印象で換えなければ良かったかと少し後悔しましたが、数時間のエージングでしっとりしてきたので、そのままになりました。設計段階ではKZかSILMICまたはBP(両極性)を考えていましたが、16Vの小型品で1000uF以上はないようでした。25V以上だと大きくなり、既に切り出してしまっていた基盤サイズに合いませんでした。

USBオーディオ

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デジタル/アナログ別の専用電源によるセルフパワー駆動ということで、予想していたよりも圧倒的にいい音でした。音自体は低域の量感とキレがよく、元気のあるクリアさという感じ。デジタル出力モジュールでの外部DAC経由では、光、同軸いずれも迫力が増しながら繊細な音も出てきます。もう少し艶がのってくると言うことなしでした。PCとの接続も問題なしで電源ONで自動認識されました。

USB入力からのヘッドホン出力では、ボリュームMAX付近でわずかにサーっというホワイトノイズが聞こえます。市販製品でも同様ですのでこれは納得。USB以外の一般のライン入力では聞き取れるようなハムノイズはありませんし、ボリュームを上げていってもサーノイズは聞こえません。ちなみにUSB入力のヘッドホン出力では、64Ωのヘッドホン使用時にレベル調整を最小の+12dBにしてもボリューム位置9~10時程度で十分な音量になりました。ヘッドホン出力にはゲインが大き過ぎるかもしれませんね。

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ちなみに上右写真の下段は、D/Aコンバータ+TA2020-020を使ったパワーアンプの筐体でして、ケースを合わせて製作したものです。真空管12AU7にはマイクロフォニック対策でシールドケースを付けています(無くても大丈夫でしたが)。真空管の横にあるアルミケース様なものは、整流用のショットキバリアダイオードが付いた平ラグが中に入っています。真空管と近いため、ダイオードのスパイクノイズを考慮してアルミ板で箱形を作り内部に鉛シートを貼ってシールドしています。