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情熱のかけらの記録

KONO コーヒーミル F702 分解清掃

(KONO F702 分解清掃)2022年5月~備忘録~

元々コーヒーは好きで、母方の祖父につき合って中学生時代から飲んでました。高校時代は普通に喫茶店に行ってましたので、キリマンとかコロンビアとか指定してブラックで粋がっていました。お安いブレンドを避けるあたりが気取ってますね(今考えるとアホな若造です)。

高校2年の冬頃に先輩からアイリッシュコーヒーを教えてもらい、それがとても美味しくて寒い時期にはよくオーダーしていました。『高校生がアイリッシュはマズイだろ!?』と少しは後ろめたい気持ちもありましたが、お店の方も何も言わず平気で出してましたね。喫茶店がまだ隆盛の70年代ですが大らかでした(笑)。

KONO COFFEE MILL F702 / 珈琲サイフォン株式会社製

サイズ(mm):W125×D160×H335
重量:1,715g
容量:ホッパー/約40g、引き出し/約35g

コーノ(KONO式)のコーヒーミルには種々のモデルがありますが、その中でも大型の部類になるF702です。姉妹モデルにF701があり、引き出し(受け皿)の取っ手に獅子の装飾付きがF702です。簡素な取っ手のみがF701のようです。2段の引き出し式で上段が粉受けになっています。下段はガラス製のキャニスター入れになっています。

製造は創業1925年の「珈琲サイフォン株式会社」です。コーヒーサイフォンのパイオニアとして有名な老舗コーヒー器具メーカーですね(現在の河野社長は三代目です)。製造年代は不明ですが1960~70年代でしょうか。既に製造終了している入手困難なモデルの一つで、F205やF301,F303等は中古市場で時々見かけますが、F700番台はあまり見かけないですね。


粉受けの引き出しには磁石が付いているので使用中にズレてきたりしません

試し挽き程度で保管していたという綺麗な品を入手したのですが、内部に少しコーヒー粉が付いていましたので分解清掃しました。分解はとても簡単ですね。まず上部のハンドルとスプリングを抜き、粒度の調整ダイヤルは残して締め込んでおきます。続いてホッパーを止めている3箇所の木ネジを外してカップを取り外します。ミルの機構部分は一体型のコンポーネントに組み立てられていて、本体上部の丸穴(前後に切り欠きあり)に嵌め込んで固定されていますので、4箇所の木ネジを外せば機構部分を丸ごと引き出せます。

ここまで分解すれば、大小の刷毛を使って臼刃も何とか掃除できるのですが、今回は機構部分も完全に分解してみました。上下の軸保持金具はホッパー板を挟んでネジで固定されているのですが、ナット部には白くペンキ(ボンド?)の様なものが塗ってありました。「微調整してあるから外すな!」的な雰囲気が漂ってきますね。ここの固定具合で軸の中心精度が変わりますので、分解しちゃうと組み立て時に中心だしの調整が必要そうです。とはいっても、ここまできたら「男は度胸だぜ!」的な勢いで、白くマーキングされた初々しいナットを外したのでした(初めての分解経験だったのね!とかは独り言ですけどね)。これでもうネジはありませんのでバラバラにできますな。


部品数はさほど多くありません。木材の種類はわかりませんがマホガニー色の塗装

さて、このミルの臼刃です。コーノミルの特徴的な部分で評価も高いようですが、触ってみても切れそうな感じは全くないですね。同じ二重螺旋臼刃の形ですが、フソーやボンマックまたはプジョーやザッセンハウスとは刃の造りが全く違います。

内刃は最下部のギザ刃で掏り潰すことで粒度が調整されるのでしょうが、豆の巻き込みと粉砕には大きさの異なる9枚の金属板をずらし重ねて、5条の螺旋形勾配を形成しています。また外刃は上部が少し絞られた形になっていて、砕いた豆が上に飛ばないようになっています。外刃(臼)も切れそうな鋭利な感じはなく擂り鉢的です。こんな刃でよく挽けるなぁと思わせますね。


「実用新案登録第1090835号/意匠登録第366344号」のシールが貼られています

しかし、実際に豆を挽いてみると軽快な挽き心地です。手持ちのプジョーや他の日本製ミルと比べても優るとも劣らない感じです。このミルは両軸保持(2点支持)で、上部はベアリング(下部はブッシュ)で軸を受けているため、軸ブレがなくスムーズに回転します。また、臼刃が大きく(径45mmでプジョーやザッセンハウス等は30mm程度)、ハンドルの動作半径(120mm)も大きいことが軽い挽き味になっているとも言われますね。

手挽きミルでは刃の鋭利さ以上に、臼刃の形状(工夫)が適切である方が挽き味を良くするのでしょうか?粒度の均一性や微粉の量など挽き具合が味に直結する部分もありますので、操作感のみではなく総合的に判断しないといけないのでしょうが、なかなか奥が深いですね。ちなみにF702(F701)の刃は、F300シリーズ(F301/F303/F305/F307)やF600シリーズ(F601/F602/F603)と共通で同じ形状のようです。


ホッパーと外臼を嵌め合わせる凹凸が一箇所だけあります(赤丸部分)

分解清掃後の組み立てでは、軸の偏心調整だけは慎重に行いました。精密な組み立て補助具などはありませんので、内刃を外臼にキツく締めた状態で上下の軸保持金具をボルトで連結するのですが、下側軸保持の金具は外臼を挟み込んで、押さえながらの作業ですので少々面倒です。

上下連結後は少し内刃を緩めて回しながら擦れをチェック。臼の片側だけ擦れているようなら、再度内刃を締めて取り付けを微調整するといった作業を繰り返しました。最終的には0.1mm以下で偏心は抑えられてるだろうという"希望的感触?"で打ち切りました(笑)。

このコーヒーミルは大きく立派な筐体で挽き味も良いのですが、一つだけ構造的に気に入らない"欠点"があります。分解して気づいたのですが、ホッパーのカップを外したら、本体とカップ下部の間にコーヒー豆がいくつか挟まっていました。よく見るとカップの縁部分と本体の間に隙間があり、跳ねた豆が挟まりやすいようです。強めに挟まると少し叩いた程度では取れなくなりそうでしたので、清掃後の組み立て時にシリコンゴムシート(3mm)をリング状に切り出し、隙間を埋めるように挟んでカップを取り付けました。


底部には滑り止めの植毛紙(フェルト?)が貼られています

分解清掃と共に本体木部も磨きましたので、とても綺麗なミルになりました。アンティークなインテリアとしても存在感抜群ですね。実際、普段使いには勿体なくて飾り戸棚に入れてます。(使わないことこそ勿体ない?)