FOSTEX FT96H
スーパーツィーター
現用していた国産スピーカーの高域が気になりだして、スーパーツィーターを追加してみることにしました。スーパーツィータを使うのは初めてなのですが、どんな変化があるのか楽しみでした。今回利用した FOSTEX FT96H はホーン型のため、硬い音なのかと思い集成材で作った箱に収め、開口部に段差のあるテーパーを付けて、見た目もちょっとかっこいい擬似的なホーン形状にしてみました(笑)。この後、ALTEC CD408-8A でスピーカー本体も製作することになるのですが、その製作とのマッチングもなかなか良いものになりました。
ハイパスネットワーク [ FOSTEX FT96H データシート ]
FT96Hは出力端子も付いている完成品ですので、後はハイパスネットワークがあれば、そのままポンと置いて接続すれば使えるようです。このユニットの諸元や周波数レスポンスを見ると、4KHz~33KHzで使えるようです。今回はスーパーツィーターとしての利用を考えていますので、15KHz~20KHz以下をカットするハイパスネットワークを検討しました。最も簡単なのが、コンデンサだけを使った6dB/Oct (-3dBクロス) ですが、スーパーツィーターとして出しゃばらない味付けを考えていましたので、より急峻な周波数カットになる 18dB/Oct (-3dBクロス) での、コイルとコンデンサの組み合わせを計算しました。また、この時点でALTEC CD408でのスピーカー製作も構想していましたので、現用のもので19KHz前後、CD408用で16KHz前後の周波数になる組み合わせにターゲットを絞りました。
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18dB/Oct (-3dBクロス) の場合の組み合わせ例
周波数 | 計算値 | 実際組合わせ | コンデンサ組合わせ | ||||
fc(Hz) | C1(μF) | C2(μF) | L1(mH) | C1(μF) | C2(μF) | L1(mH) | |
15000 | 0.88 | 2.65 | 0.06 | 0.88 | 2.66 | 0.06 | C1: 0.22 + 0.68 C2: 1.0 + 1.0 + 0.33 + 033 |
16000 | 0.83 | 2.48 | 0.06 | 0.83 | 2.48 | 0.06 | C1: 0.15 + 0.68 C2: 0.33 + 0.47 + 0.68 + 1.0 |
16500 | 0.80 | 2.41 | 0.06 | 0.80 | 2.42 | 0.06 | C1: 0.33 + 0.47 C2: 0.15 + 0.27 + 1.0 + 1.0 |
18000 | 0.74 | 2.21 | 0.05 | 0.74 | 2.22 | 0.05 | C1: 0.27 + 0.47 C2: 0.22 + 1.0 + 1.0 |
18800 | 0.70 | 2.11 | 0.05 | 0.70 | 2.10 | 0.05 | C1: 0.15 + 0.22 + 0.33 C2: 0.27 + 0.47 + 0.68 + 0.68 |
19400 | 0.68 | 2.05 | 0.05 | 0.68 | 2.05 | 0.05 | C1: 0.68 C2: 0.15 + 0.22 + 0.68 + 1.0 |
20000 | 0.66 | 1.99 | 0.05 | 0.66 | 2.00 | 0.05 | C1: 0.33 + 0.33 C2: 1.0 + 1.0 |
ネットワーク基盤を製作
ネットワークは10cm角に切り出したべーク板に、0.5mm厚銅板と金メッキのキュービックターミナルで作り、コンデンサや抵抗を簡単に交換できてクロス周波数を変えられるようにしました。検討したコイルとコンデンサの組み合わせは表のとおりです。定数どおりのコンデンサばかりではありませんので、複数本のパラ接続ですが最大でも4パラでほとんどカバーできそうです。なお、このユニットの能率(S.P.L)は100dBですので、低能率の現用機やALTEC CD408の高能率(98dB)にも合わせられるよう、可変アッテネータを付けました。ただし、可変アッテネータでの音質劣化がわかりませんでしたので、ネットワーク基盤のキュービックターミナルを分けて、可変アッテネータをバイパスして抵抗による固定アッテネータでも使えるようにしました。
(図1)6/12/18dB/oct可能なネットワーク回路とする
(図2) 製作基盤 - キュービックターミナルと基板裏に0.5t銅板
本体製作
エンクロージャ材は15mm厚のパイン集成材を近くのD.I.Yショップでカットしてもらいました。開口部のテーパーは当時9mmまでのボーズ面ビットしかなかったので、トリマーで丸めた後にヤスリでゴリゴリ削りました。
ネットワークを納めるお腹の部分です。蓋はネジ止めにして開けられるようにしました。可変アッテネータはFOSTEXのR82Bを使用。 | 使用したコイルはTRIRECの注文生産品。立派すぎる線材で巻いてあり0.06mHにしてはかなりでかい! コンデンサはムンドルフのMCAPを使いました。 |
べーク板の基盤は10mmスペーサで固定しました。べーク板裏に回路用銅板を貼ってターミナルを繋いでいます。 | ユニットに接続するとこんな感じです。キュービックターミナル(左右で24個!)が結構なコストになりますねぇ。 |
左右できあがったところ。もう少し磨いて綺麗に塗装すればよかったですね。 | 底部の様子。ONKYOの記念品インシュレータで3点支持にしました。本体重量も2kg程度あります。 |
スピーカー端子はバナナプラグが使えるもの。そこそこ良くできている端子ですが金メッキはやや貧弱です。 | スピーカー本体の端子とバナナプラグで並列に繋いでみる予定で、カナレのケーブルを切り出し末端処理しました。 |
試聴と調整
この当時よく使っていたソニーのSS-A5という2WAYスピーカーに繋いでみました。インピーダンスがちょっと違うけどドンマイですな(本命はこの後作るALTECですから)。19.4KHzクロスにして、スピーカーの能率に合わせアッテネータで絞って聴いてみました。たしかに高域が伸びているように感じますが、目立って強調されるというほどでもないようです。アッテネータでレベルを少し変えてみてもあまり出しゃばるようなこともないですねぇ。このスピーカーはボーカルは押し出し感があっていいのですが、ピアノの音がダメダメでした。それが格段に本物らしくなりましたねぇ!それと、何か低音も生き生きしてきたような気がします。これはちょっといいかもしれません(笑)。
3m程のリスニングポジションからはスーパーツィーターが鳴っているとわかるような音は聞こえませんが、スピーカーに耳を近づけると、ごく小さなシャカシャカ音が聞こえます。設置位置(前後)を微妙に調整しても、かなり印象が違ってきます。スーパーツィーターはセッティングがシビアという意見も何となくわかりました。はたして、これが本来の性能なのかわからないですが、音場全体のバランスが良くなっているようには感じます。
アッテネータで音を悪くしていることはないかとも気になって、次に抵抗を使った固定アッテネータにして聴いてみました。キュービックターミナルで配線しているので、回路変更もドライバー使用程度で簡単です。使ったのは、米MILSの無誘導巻線抵抗で耐圧12Wの高性能品らしいです(1本840円)。6Ωと2.5Ωで12.4dB落としてみましたが、いやぁ、これは凄かった!12dB以上落としても高域の主張がはっきりわかります。高音域の音の抜けが凄く良くて逆に出すぎです。ちとうるさい(笑)。いい抵抗で作る固定アッテネータ恐るべしです。でも、これ以上下げられる組み合わせ持ってません(泣)。とりあえずALTECでのスピーカー製作までは FOSTEX R82B を使うことにしました。このスピーカーは2007年2月に製作したものです。
(追記)
ALTEC CD408-8Aを使ったスピーカー が完成して、またまたMILSの抵抗を使って試してみました。16KHzクロスにして、-3.5dBと少し多めにレベルを下げているのですが、やはり高域の主張が強すぎると感じます。抵抗の性能が良すぎるのか高域が強調されやすいのか、音は素晴らしいと思いますので、もう少し下げてやるといいのかもしれませんね。そのうち抵抗を追加購入して試してみようと思います。DALEの無誘導巻ですと、もう少しだけ安価に入手できますので、こちらでも試してみようと思いますが、当面はFOSTEXのR82Bを使うことになりました。