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情熱のかけらの記録

ALTEC CD408-8A スピーカー

ALTEC CD408-8A スピーカー
( +Fostex FT96H スーパーツィーター )

オーディオは学生時代から20代前半頃に少しお熱をあげた時期があって、いつかはALTECとかホーンシステムとか夢見ていたのですが、如何せん若さと情熱はあってもお金がない時代でしたので、そこそこ身の丈にあった機器を使って、高級機は憧れて指を咥えているだけでした。その後もPCやカメラ(写真)、フィッシング等の趣味に情熱も投資も移って、オーディオは置いてけぼり状態でした。それでも故障したり調子が悪くなった機器の買い換えはしていたのですが、どうもスピーカーがヘタってきたのか音が気になってきたのを機に、スピーカーを製作してみることにしました。


構想とユニット選定 [ ALTEC CD408シリーズ ]

さて、スピーカー製作といっても、オーディオルームとよべるほどの立派なスペースが我が家にあるわけでもありませんので、小型~中型サイズで高さ80cm以下、幅も40cm以下で構成とユニットを検討しました。本当は小型のウッドホーンを使ったシステムを作りたかったのですが、設置場所の関係もあって今回は断念。ユニット構成もマルチではなく同軸でと考えていました。ハセヒロのバックロードホーンも魅力的に思えましたが、現代版ALTECユニットのCD408-8Aを雑誌で知ってからは、もうこれしかないと何故か決めてました。"The Voice of the Theater" に憧れてましたからねぇ(笑)。

このユニットの特性を調べてみると、Fs 84.4Hz(周波数レンジ82Hz~16KHz、頑張っても低域限界66Hz程度)で、ALTECお約束なのか、やはり低音が出そうにありません。高域の16KHzは実際の可聴帯域としてはさほど不足はないと思いましたし、スーパーツィーターを追加する予定でしたので「何とかなるんじゃね?」の算段です。エンクロージャは米松合板の標準箱も販売されていましたがサイズ等が気に入らず却下。バスレフの路線で普通にポートを開けるか、ダブルバスレフの形式にするか検討を進めました。エンクロージャ設計では、SPEDというソフトウェアのお世話になりました。添付の周波数特性グラフはこのソフトでシミュレートしたものです。

エンクロージャー設計


(案1)バスレフ型
実質内容績38~42L前後で共振周波数を70Hz程度で設計したバスレフエンクロージャです。ユニットの特性上これ以上共振周波数を下げても、まともな低域が期待できないばかりか、中域もメリハリのない音になりそうに思えました。もっと容積を増やせば低域を出すにはいいのかもしれませんが、設置するスペースの関係で奥行きを取ることで検討してみました。

エンクロージャの後板はネジ止めで開けられる設計です。ユニットはフロントバッフルの内側に付けて、前面はボーズ面(12mm)でテーパーをかける予定でした。ポートは単にデザインの好みから2つの円形としました。

(案2)ダブルバスレフ型
実質内容績35~40L前後で共振周波数を65Hz程度で設計したエンクロージャです。フロントバッフル部分をネジ止めにして、取り外しできる構造で考えました。ユニットは内側から付けることで前面はボーズ面のテーパーをかけられるように考えました。共鳴室のポート周波数はfd1=201Hz, fd2=65Hz程度を想定しています。容積をもう少し増やして60Hz程度まで出るようにしてもいいかもしれませんね。

実はこのスピーカーを製作後に SA/LABのSA/F80AMG という8cmユニットを使ったダブルバスレフ型のスピーカーを製作したのですが、8cmユニットとは思えない低音が出るのに驚きました。中高域の解像感や伸びやかさに少し不満もありましたので、息子にお遊び用で進呈しましたが、もしかしたら、CD408-8Aでもダブルバスレフ型の方が良かったかもしれません。

結局、ダブルバスレフですと設計失敗の時に調整しようがないので、ポートの調整程度なら可能なこの設計で製作を進めることにしました。ユニットは同軸2ウェイ形式で、コンデンサ1本のネットワークでツィータが繋がっていています。外せるのか観察してみましたが、微妙にしっかり付いているようで、壊しては元も子もないのでそのまま使うことにしました。

スーパーツィータ追加 [ 製作記はこちら ]

FOSTEX FT96H をケースに組み込む

パイン集成材(15mm厚)の箱に組み込んだFT96Hです。エンクロージャはネットワーク室以外は接着してしまいましたので、分解しないとユニットを外せません(笑)。フロントバッフル部は二枚重ねでそれぞれボーズ面のテーパーを付け簡易ホーン形状になっています。

ハイパスネットワークは、16KHz, 18dB/Oct (-3dBクロス) ±90°逆相接続にしています。CD408-8Aを使った今回の製作ですと、このカット周波数でうまく繋がっているようです。アッテネータで-2dB落として能率を合わせていますが、高域の不足や強調は感じません。ONKYOのかわいインシュレータを底面に張り付けて3点支持で支えています。

バスレフ型で製作

板取りと材料
エンクロージャの材は米松合板が理想でしたが、扱っている会社に見積もりをとるとカット込みで8万円以上になり断念しました。米松集成材でもやはり7万円以上になるようで、一般的なパイン集成材(赤松や姫松の集成材ですね)の25mm厚で製作することにしました。参考板取を作成して数社の見積もりをとり(結構値段の差がありました)、結局、MDFで予定していたドーナツ型のグリルネット枠を含めて6万円以下でできる最安のところに発注。納期は約3週間でしたが、ちょっと発注先失敗でした。届いた材の寸法自体は誤差1mm以下でまずまずなのですが、穴開けでの切断面の荒れが酷く、特にポート用の穴の断面はヤスリでは修復できないような状態でした(自由錐でも使ったのでしょうか?)。仕方なくパテで埋めて研磨してから塗装する羽目になりました。こんなことなら自分で穴開けすればよかったと悔やみました(泣)。

製作道具の準備
エンクロージャ材が揃うのに並行して、製作に必要な道具で不足しているものを準備しました。電動ドリルやジグソー、サンダー、トリマー&ビット、ヤスリ各種はありましたが、トリマービットで12mmのボーズ面がなかったので購入(15mmでもよかったですが、ビットって良いものはかなり高価なのよね!)。ねじ穴も25mm厚の材になると垂直に孔開けしないとズレますので、ドリルスタンドも調達しました。

また、クランプやハタガネは40cm以下の小さなものしか持っていませんでしたので、60cmクラスのハタガネを4本購入。しかし今回は高さ60cm程度になる箱を作成しますので、ハタガネだけでは接着後の締め付けができません。そこでラワン材と1mの棒ネジ+ナットで4組の中型クランプを作成しました。エンクロージャー製作のための道具を製作するだけでも手間がかかりますが、これも自作の楽しみのうちですね。出力端子、吸音材(ミクロンウール)、スピーカーネット、ネジ類、木ダボと位置決めジグ、塗料(水性ウレタンニス)、サンドペーパー等を揃えて、後は箱の材を待つばかりです。

製作開始
エンクロージャー材の厚さが25mmありますので、重さを別にすれば接合で直角を出すのは比較的楽なのですが、それでもクランプ時には微妙な調整が必要です。今回はカットされた材の精度が良かったので、ズレもあまり出なかったのは幸いでした。接着では木ダボを使って強度を出していますが、素人ではジグを使ってもこのダボ打ちをピッタリ合わせるのは難しいので、受けの穴側を少しザグッて余裕を持たせて合わせました。なお、補強用部材も同じ集成材から切り出しましたが、25mm厚x30mm幅にしていますので強度も十分でした。

ユニット取付用のネジは鬼目ナットを打ち込んで締め付けるようにしました。位置決めは型紙を作って合わせました。ユニットには8個のねじ穴がありますので全部使うことにしました。

鬼目ナットを垂直に打ち込むためには、当然ながら下穴も垂直に開いていないとダメですので、ドリルスタンドを使っています。このスタンドは簡易型なのですがコンパクトで使い勝手がいいようです。

問題のポート穴断面を修復中。パテで埋めて磨いてみました。まだ不十分な段階。パテの盛り直しを含め2日以上かけて整形しました。

天板と底板は、先に補強材を取り付けておきます。フロントバッフルとの接合部分に少ないですが木ダボを打ちました。ボンドはケチらずにたっぷり使いますが、はみ出たら濡れぞうきんで拭き取ります。

天板と底板をフロントに接着しますが、天板と底板を同時に着けず、手間ですが別々に分けて直角を出しながら接着した方が正確にできます。自作のクランプで締め付け中。

直角になるようにクランプのあて位置を微調整します。

ピッタリ接合された様子。板のカット精度がよいと後々の研磨も楽になります。

側板に木ダボの穴を開け、位置決めジグを嵌めた様子。この後、接合済みの天板+底板+フロントバッフルをあてがって、ダボ穴位置を決めます。

側板取付けのためのダボ位置を決めるため、慎重に合わせます。結構重いので疲れますが、ここで手を抜くと綺麗に仕上がりません。

端材を使って角と面を合わせるといいかもしれません。

クランプ、ハタガネ総動員で締め付け。

左右の接着が完了。この状態で一昼夜おきました。

綺麗に接着できました。ユニット取付穴の外側は12mmのボーズ面でトリマー研磨してあります。ポートの断面は9mmボーズ面です。

ここまでできれば、後の力仕事は研磨ぐらいです。もう少しですね。

裏板は縦横2mmほど削って取り外しの余裕を作ります。厚さがありますのでトリマーで表裏2回に分けて削ります。

綺麗に削れました。電動トリマーはあると何かと便利な工具です。使っているのはMakitaのM371です。ストレートビットで20mm程削った後、反対面から残り5mmを目地払いビットで削ります。

裏板とスピーカー端子を付けるための部材です。この部材は15mm厚の集成材で、スーパーツィータ製作時の端材です。

電動サンダーで研磨します。120番で一次磨きして、240番で仕上げ磨き。ここまででもツルツルになりますが、最後に400番で軽く磨きました。ポートやユニット取付の断面は手磨きして確認します。

左は研磨完了後の写真。春先に作業しましたが汗だくです(笑)。継ぎ目が綺麗に接合されているのが研磨するとわかります。

フロントバッフル両サイドも12mmのボーズ面で丸めてあります。この後、内部のみ先にニスを塗っておきます。材を締める為ですので綺麗に塗る必要はないですね。

上写真のように接合面の段差は指でさすってもわからないくらいにツルツルになりました(嬉)。 ポート断面のパテはニスを塗っても白っぽくなりますね。ちなみに今回使用した集成材は、フィンガージョイントが断面に出るタイプです。板の表面にはギザギザのジョイント模様は出ません。

裏板のネジ止めにも鬼目ナットを使いました。裏板断面に当たる部分に0.9mm厚のコルクテープを貼り合わせました。

接合面には1mm厚のゴムシートを挟んで密閉度を上げましたが、失敗だったかもしれません。後日裏板を外そうとしたら、密着していて取り外しが大変でした。ハンドルを付けるといいかもしれません。

塗装完了後の様子です。水性ウレタンニス(艶)に少しつや消しを混ぜて、4回程塗り重ねました。垂れもなく綺麗に仕上がりました。

裏板を仮にネジ止めしてみた様子です。ネジの数が多すぎかもしれませんね。ネジ締めは電動ドリルじゃないとかなり疲れます。

ちょっと興味本位でしたが、低音や防磁に少しは効果があるかと、ボイスコイル外側に0.5mm厚の鉛シートをかぶせて、融着テープで固定してみました。ちなみにこのユニットは防磁ではありません。

出力端子までのケーブルをハンダ付けしました。使ったケーブルはBELDEN 8470 (16AWG)です。

このユニットは取付グリル前面に繊維質(紙?)のスペーサが10mm 厚で付いており、後ろからのネジ止めは工夫が要りそうでした。取ってしまえばいいのですが接着されていて剥がしにくいのです。結局、ジュラコンスペーサをユニットのスペーサ厚さにあわせて調整して挟んでから、スプリングワッシャー付きのネジで止めました。とりあえずは、ガタつきもなくきっちり締め込みでき、音出しでもビリつきや甘さは無いようでした。

最後の仕上げは、グリルネットの作成です。MDFで切り出したドーナツ状の枠を6mmで表側を面取りしてペーパーをかけ黒く塗装。グリル止めの位置決め用型紙を作って、枠と箱の穴位置を一致させます。

強力ボンド100クリアを使って、枠にスピーカーネットを貼ります。この時、グリル止めのボルト部分も同時に枠に打ち込んで接着します。ネットは大きめに切って、余った部分ははさみで綺麗にカットします。

型紙をあててマーキングした位置にドリルで必要な深さだけ慎重に穴を開けます。ここまできて間違えるとギャッとなるでしょう!(笑)

うまく嵌りました! こういう作業は型紙を作って位置合わせした方が無難です。ズレて付かないと製作が台無しになります。

完成しました。ネットを付けなくともなかなかいい感じです。このスピーカーは真空管アンプとの相性もいいようです。

ユニット保護のため通常はネットを付けて使用することにしました。グリルネットによる音の劣化は感じません。


試聴と調整


完成後の試聴ですが(スーパーツィータなし)、"The Voice of the Theater"というだけあってボーカルは良いですねぇ。また、同軸ユニットらしく音像定位がよく、抜けの良さと音の直進性というか前に出てくる感じがあります。まるでアーチストが目の前に来て歌っているようです。以前から使っていた2ウェイや3ウェイの国産機からベールを1枚剥がしたようなクリアな音が気持ちよく響きます。能率が高いせいか、あっけらかんとして伸びやかに音が出てくるみたいです。あまり陰陽があるというか、しっとりした音の印象ではないですね。でもこの音は好きかもしれません。家族に以前の音とどちらがいい?と尋ねると、皆このスピーカーの方がいいという感想でした。

低音は調整不足の感じもありましたが、それを補ってあまりある中高域の良さがあります。ただ、ストリング等の響きが少し足りない様にも感じました。当初、吸音材(ミクロンウール)は両側と底面、後面、それとポート周りに入れていたのですが、これを対向面とポート周りに減らしてみると、ぐっとクリアさが増して響きも良くなりました。問題の低音は吸音材を減らした分や設計ほど内容積のロスがなかったことから、少しポート共振周波数が低すぎかもしれないと思い、エンクロージャ内側のポート端を少し削って拡張してやりました。それでも70数Hz程度の計算なのですが、前よりも少し量感が増して好ましい低域になってきました。

ピンクノイズやサイン波を使って、WaveSpectraというソフトで周波数測定してみましたが、しょぼいマイクしかありませんでしたので12KHz以上の高域はまともに測定できませんでした。低域もグラフからは60Hz以下まで伸びているようですが、聴感上の量感とは差がありました。測定機器が不十分なので目安程度ですが、1.5KHzと4.5KHzあたりに少しへこみがあるのが気になりました。

スーパーツィーター(FOSTEX FT96H)を追加してみる
FT96Hを追加すると全体のバランスが良くなったように聞こえます。何故か低音も出てくるように感じて広帯域に聞こえるから不思議です。このスーパーツィーター自体はホーン型で音が硬いかもと思い、木の箱にいれてホーン形状の開口にしたのがうまくいったのでしょうか。耳を近づけてやっと聞き取れるようなシャリシャリした音(にしか聞こえない)ですが、音響全体への影響があるのだなと改めてスーパーツィーターを見直しました。設置位置(前後)を調整すると微妙に出音の印象が違ってきます。スーパーツィーターはセッティングがシビアですが、うまく使えば効果がありますね。

とりあえず、今までの国産機スピーカー達よりは音が好ましく感じ、筐体も綺麗に完成しましたので主役交代となりました。このスピーカーは2007年3月~4月にかけて製作したものです。